[原子力産業新聞] 2000年10月5日 第2057号 <3面>

[台湾] 経済部長が龍門発電所の建設中止を勧告

今月中に最終決定へ

台湾の林信義・経済部長 (通産相) は9月30日、第4 (龍門) 原子力発電所 (各135万kW、ABWR 2基)の建設中止を勧告する専門家評価委員会としての意見書を行政院 (内閣) に提出した。

この見解は今年3月、これまで原子力開発を積極的に推進してきた国民党に代わって政権についた民主進歩党の陳水扁総統の選挙公約に沿う形になったが、立法院 (国会) が原子力推進派であることから今後の見通しは不透明な状況だ。行政院はさらなる審議を経て今月中にも最終結論を出す予定になっている。

林経済部長は建設中止を勧告した理由として、放射性廃棄物の処理処分問題が解決していないことを挙げており、電力不足は新たな天然ガス火力発電所で補うべきだとの考えを示した。しかし、9月16日に開催された評価委員会の最終会合では、出席したメンバー18人中9名が反対、6名が賛成、林経済部長を含む3名が意思表示を保留するなど、両派の議論は最後まで結論に達しなかったと伝えられている。

同会合で確認された両派の共通認識は次の4点となっている。(1)原子力発電所の建設は電力供給上の議題だが、エネルギー、環境保護、経済、政治、国家保安等と密接な関わりがあるため論争は避けられない(2)経済発展の維持と国民の需要を満たすためにも第4原子力発電所を建設するか否かに拘わらず、計画の合理化と安定化、電力供給の安定化を図る必要がある(3)国産のエネルギーを持たない台湾は、今後国際的な環境保護の趨勢に歩調を合わせていくためにもエネルギー政策の見直しを必要としており、積極的な省エネルギーとエネルギー高効率化への取組み、新エネルギーの開発利用、産業構造の見直しおよび電力産業の自由化と経営の高効率化を図らねばならない(4)第4原子力発電所の建設続行の是非に拘わらず、放射性廃棄物の処分問題と既存原子力発高所の老朽化が進んだ場合の解体借置については前向きに対処する必要がある−など。

龍門原子力発電所は米ジェネラル・エレクトリック社が建設工事を受注。台湾北部の台北県貢寮のサイトで1、2号機の建設工事が昨年3月と8月に相次いで始まっている。現在、3割ほどの進捗率で、2004年と2005年の完成が予定されていた。


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