[原子力産業新聞] 2000年10月5日 第2057号 <5面>

[鹿島] 廃棄物地層処分評価−物資移行特性を高精度で把握

総合評価システムを開発

大手建設メーカーの鹿島 (梅田貞夫社長) は、放射性廃棄物の地層処分における地盤・岩盤調査の高精度化を目指し、「物質移行総合評価システム」を開発した。同システムは、ポーリング孔間の地盤や岩盤を対象に、「連続波型の電磁波トモグラフィ」を用い、透水特性を表現する水理地質構造を精度良く把握することによって、評価対象とすべき水みちを明らかにし、「サイナソイダル透水試験法」、及び「原位置トレーサー試験」にて、その水みちの透水・物質移行特性を精度良く把握し、それらのデータを「3次元物質移行解析コード」を用いて、総合的に評価するもの。

放射性廃棄物の地層処分の評価においては、地盤・岩盤内の地下水の流れとともに、地下水に溶解した物質がどのように移動するか (物質移行特性) について評価することが不可欠となる。この地下水中の物質は移流・分散、周辺地山への吸着、放射性核種の壊変を含む化学的変化を伴いながら、亀裂、破砕帯等の主要な水みちを移動する。これらの物質移行特性は、検討対象とする地盤・岩盤のスケールに大きく依存する。すなわち、室内試験では不十分であり、実際の原位置において測定することが要求される。しかし、これまでは、原位置での水みちの特定から、透水・物質移行特性という個々の要素技術は開発されているものの、調査から解析に至るまでの一連の流れを総合的に評価・解析するシステムは従来なかった。

そこで同杜では、これらの物質移行特性を地盤・岩盤内において精度よく把握する手法として、今回、物質移行総合評価システムを確立した。

同システムは、評価対象とすべき水みちの特定、透水・物質移行特性の把握、及び解析・評価を総合的に行うことができるため、個別に行う調査技術と比較すると、多くの地盤・岩盤情報を、高精度で得ることが可能であり、後工程の設計・施工を効果的に進める上でも重要だ。

鹿島では今後、より多くの原位置試験を行うことにより、物質移行総合評価システムとしての適用性の向上を図っていく方針だ。


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