[原子力産業新聞] 2000年10月12日 第2058号 <2面>

[ウラン廃棄物] 処理処分の考え方まとめる

「浅地中に9割処分可能」

原子力委員会原子カパックエンド対策専門部会は、「ウラン廃棄物処理処分の基本的考え方について」の報告書案をとりまとめ、6日の原子力委員会会合で報告した。

案は、同部会が今年3月に設置した「ウラン廃棄物分科会」(主査・石榑顕吉埼玉工業大教授) が進めてきた検討を基に作成された。従来の低レベル放射性廃棄物に適用された段階的管理とは異なるウラン廃棄物の特徴を考慮した考え方に基づき、ウラン廃棄物に相当するRI・研究所等廃薬物も対象に含めた処分方策の検討結果となっている。

ウラン廃棄物はウランの濃縮、燃料加工等に伴い発生し、主な廃案物としては排気フィルター、廃液処理スラッジ、焼却灰、可燃性・難燃性・不燃性雑固体廃棄物、および使用済み遠心分離機などがある。これらは固型化等の処理が行われておらず、未処理のまま貯蔵施設内に保管されている。昨年3月末時点の累積発生量は、200リットルドラム缶で約8万4000本で、2030年度末には約56万本になると推定され、このうち、約6割は、施設の解体及び遠心分離機の取り替えにより発生するものと予想されている。

報告書案では、ウラン廃棄物は他の放射性廃棄物と比較して放射線の影響は小さいが、放射線の影響が最大となる時期が数十万年後になる可能性があることや、放射線以外の観点から処分可能濃度が制限される可能性があることを念頭に処分方策を検討。

対象廃棄物は、次のような考え方に基づき、安全かつ合理的に処分可能だとしている。(1) 対象廃棄物に対して除染処理を行うことにより、放射性核種濃度を低減し、クリアランスレベル以下になるものは、放射性廃棄物として扱う必要のないものとして処分又は再利用を行う。それ以外のものについては、濃度等に応じて適切に区分し、それぞれの区分に応じた処分方策を講じる (2) コンクリートピット等の人工バリアを設けず、素掘りの溝状などの空間に埋設する素掘り処分を想定し、仮に0.3ミリシーベルト (mSv) / 年を線量目標値として線量評価を行った結果、対象廃棄物の約9割が素掘り処分できる可能性があると試算される。また、地下利用に余裕を持った深度への処分を想定した場合、対象廃棄物のほぼ全てに対応できる可能性があると考えられる (3) 今後、処分可能な廃棄物の濃度基準の設定に当たっては、線量評価の長期性、モデルやパラメータに関する不確実性を考慮すべきである。線量目標値については、公衆の線量限度の1 mSv/年を守ることを基本とし、国際的な動向等を踏まえて、被曝管理の観点からは管理することを必要としない低い線量 (10マイクロシーベルト/年) に代わる適切な線量目標値を設定することや、処分場の管理についても、評価シナリオの発生の可能性との関連において線量目標値を設定することが考えられる。

また、報告書案ほ、当該廃棄物の安全かつ合理的な処分が実施できるよう、処分の責任分担の在り方および実施体制についても触れ、(1) 濃縮事業者、再転換・成型加工事業者、研究開発機関、電気事業者など、多岐にわたる発生者が処分の責任を明確にした上で、処分の実現に向け協力し適切な対応をとることが重要 (2) 処分事業者は、処分の安全な実施および長期にわたる処分場の管理を行うのに十分な技術的能力、経済的基礎および事業の継続性が要求されるほか、処分の安全確保に関する法律上の責任を負う (3) 国は、当該廃案物の処分に関わる安全基準・指針の整備などを図り、厳正な規制を行うとともに、発生者および処分事業者が廃乗物の管理や処分を安全かつ合理的に実施するよう、関連法命に基づきこれらの者への指導監督などの必要な措置を講じることとし、処分に関する記録の維持管理等の適切な役割を果たすことが必要−などと指摘している。

さらに、処分費用の確保についても、今後、発生者や処分事業者は当該の処分方法を踏まえ、廃薬物の区分及び物量を明確にするとともに、より具体的な処分について検討したうえで、方法に応じた費用の確保を図っていく必要があると述べている。

なお、バックエンド対策専門部会事務局では、報告書案に対する一般からの意見を11月6日まで公募している。


Copyright (C) 2000 JAPAN ATOMIC INDUSTRIAL FORUM, INC. All rights Reserved.
Copyright (C) 記事の無断転用を禁じます。