[原子力産業新聞] 2000年10月12日 第2058号 <3面>

[ブルガリア] 被曝報道が規制委員長の解任騒ぎに発展

ブルガリアの複数の政府閣僚が、同国原子力規制当局のG.カスチェフ委員長の解任を要請していることが9月21日に明らかになった。

E.マネヴァ環境相によると、8月にコズロドイ原子力発電所で軽微な被曝事象が発生した際、同委員長はその影響をマスメディアに対して過大に伝えたというのが解任の要請理由。周辺のルーマニア、トルコからも不安の声が高まったためI.コストフ首相も「危険な情報を流した」として同委員長を批判するコメントを発表している。

この事象ではコズロドイ3号機が燃料交換による停止中の8月28日の深夜、同炉のすぐ前の区域にある研究所建屋付近でガンマ線線量率が許容値を超え、最高値で11μSv/時が10分間計測された。直接の原因は炉内構造シャフトが保管されていた使用済み燃料貯蔵プール内の水位の低下で、排水バルブの不具合と作業員の手順ミスが引き起こしたと伝えられている。

線量値は翌朝7時には通常レベルに戻ったが、従業員1人が1日の許容量を超える線量を被曝した。ただし、それは年間許容被曝線量の50分の1以下で、発電所側は「敷地外はもちろん、一般市民にも何の影響もなかった」ことを強調。国際原子力事象評価尺度 (INES) でもレベル1の評定を受けた。

カスチェフ委員長はこの事象に関する報告書をマネヴァ環境相とは別個にコストフ首相に提出したが、国内紙のインタビューでは同発電所内の組織上の問題に触れており、「発電所管理において十分な注意が払われておらず、昨年1年間の異常事象件数も増加している」と指摘。この記事を複数の外国通信社が取り上げたことから議論が大きくなったという。環境省では「ガンマ線の増加を探知したのは12個ある探知機のうちたった1つだった」と主張している。


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