[原子力産業新聞] 2000年10月12日 第2058号 <4面>

[電中研] 配管破壊評価法を高度化

亀裂から破壊まで予測

電力中央研究所は、原子力発電所に使われている配管の破壊評価手法の精度を向上させ、亀裂の入った配管を想定した破壊評価手法を新たに開発した。

実際に配管にかかる応力として、もっとも重要な曲げ方向の応力と配管内を流れる高温高圧の流体からの内圧という2つの応力を考慮。この種の欠陥評価に使われている破壊力学を応用して、亀裂の進展から破壊にいたるまでの挙動について予測法を開発したもの。

電中研では米国が提案した国際共同研究に参画して、高温高圧下での配管破壊実験などの情報を収集し、破壊強度の予測に必要なデータを得てきている。こうした実験データと今回の評価法の予測結果は、ほぼ一致するレベルまで精度が向上したという。

日本でも運転開始から30年近く経過している原子力発電所がでてきているなかで、高経年化対応が重要な課題となっており、通産省でも運転開始から30年を目処に、定期検査項目を重点化するなどの方針を示し、定期安全レビューなどの安全点検も運転期間の長い原子力発電所から実施してきている。定期検査の際、さ細な欠陥が配管に認められたとして、運転中に欠陥がどのように進展するかを事前に予測して、機器の交換時期などについて最適な保全計画を立案することが長期的に見て発電コストを抑制することにつながる。そのための検査基準と、適切な欠陥評価ツールが必要となる。

高経年化に対応した配管など原子力発電所の構造物の欠陥を検査し、評価する基準である、いわゆる「維持基準」は、これまで日本にはなかったが、日本機械学会が民間の基準として、とりまとめ、今年の5月に出版されたところ。電中研ではこの基準づくりに協力するとともに、欠陥評価の手法を開発してきたもので、今後も、実際の発電所における複雑な条件下で適用できることを検証し、評価法としての完成度を高めていくこととしている。


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