[原子力産業新聞] 2000年10月12日 第2058号 <4面>

[理研] 宇宙ガンマ線の謎解明へ

X線検出器を開発

理化学研究所 (小林俊一理事長) で開発した観測装置を積んだエクスプローラー (高エネルギートランンジェント天体探査衛星・第2号機) が、マーシャル諸島共和国洋上から日本時間9日午後2時38分に打ち上げられた。HETE-2 の主目的は、宇宙ガンマ線バーストの観測だ。全天のほぼ10分の1の領域を常に監視し、ガンマ線バーストが発生した場合、その位置を測定して地上に即座に通報する。

宇宙ガンマ線バーストは、数十億光年のかなたの遠方の銀河で発生する巨大な爆発現象。HETE-2 は、年間約50個 (予定) のガンマ線バーストの観測を行うことができる。HETE-2 によって、地上天文台からのバースト発生直後からの精密な迫観測が初めて可能になり、謎につつまれた宇宙ガンマ線バーストの起源に迫ることができると期待されている。

HETE-2 は、日米仏3国の国際協力によって製作され、NASA (米航空宇宙局) が打ち上げた。理化学研究所は、ガンマ線バーストの位置決めにおいて中心的な役割を担う観測装置、広視野X 線モニターを製作した。

ガンマ線バーストとは、宇宙の一点から突然多量のガンマ線が爆発的に放射される現象。だが、どのような天体が、いつ、どこでガンマ線バーストを起こすのは、現在、天文学の大きな謎となっている。ガンマ線バーストは、太古の宇宙を探る貴重な現象であり、多数の例を詳しく観測することが現在強く求められている。また、バースト発生直後の精密観測は、バーストの物理機構を研究する上で非常に重要だ。しかし、現状の観測装置では、バースト発生後、精密観測が可能なバースト位置が得られるまでに時間がかかってしまい、このような観測は非常に困難だという。HETE-2 は、ガンマ線バーストに対して最も高感度なガンマ線分光器、十分角程度のバースト位置決定能力をもつ広視野X 線モニター (検出器を理化学研究所が担当) および、高密度の符号化マスクを備えた軟X 線カメラを搭載。軟X 線カメラは、統計が良いバーストに対して広視野X 線モニターの得た位置の精度をさらに数秒角まで改善することができるという。


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