[原子力産業新聞] 2000年11月2日 第2061号 <1面>

[中国電力] 上関新設で1次ヒア開催

中国電力が建設を計画している上関原子力発電所1、2号機 (各ABWR、137万3,000kW、1号機が2011年、2号機が2014年運開予定) 設置に係わる通産省主催の第1次公開ヒアリングが10月31日、地元上関町の町民体育館で開催された。98年12月に行われた電源開発・大間原子力発電所以来の新規立地点での一次ヒアとなった今回は、建設反対派が開会前に抗議行動を行ったため、ヒアリング開始予定時間が大幅に遅れるなどしたが、開会後は大きな混乱もなく、議事は平穏に進行した。


電調審上程にむけ前進

今回のヒアは、意見発表希望者30名のうち、「居住地、意見内容などがなるべく多岐にわたるように」との観点から選ばれた20名が、それぞれの立場から意見を陳述し、会場に集まった約350名の参加者達は、終了まで熱心に聞き入っていた。

陳述では、昨今の経済不況および65歳以上の高齢者が人口の43%を占める上関町の現状を反映し、地元に対する地域振興に質問が集中した。それらに対して中国電力側は、「現時点では地元雇用などといった具体的な数値は挙げられないが、資・機材、生活物質の調達、工事の発注、就業機会拡大への寄与といった事を通じて、地元へは出切る限りの協力をしたい」「地域共生型発電所として『発電所に来てもらって良かった』と思っていただけるようなものにしたい」と述べ、発電所建設が地元へ与えるメリットの大きさを強く訴えた。

また建設予定地近辺が「スナメリ」および「ハヤブサ」といった希少生物の生息地となっていることから、発電所建設が周辺環境に与える影響についての質問や、「運開した場合、CO削減にどの程度の効果があるか」といった環境関連の質問も積極的になされ、これらに対して中国電力側は(1)スナメリは温度変化に強く、かつ餌となるアジ類なども広温性であることなどから、来遊への影響は少ないAハヤブサの生息地と発電所建設予定地とは500メートル以上離れていることから影響は少ないB中国電力の発電電力量に占める原子力の割合(シェア)は99年度実績で9%と低いため、他社に較べてCO排出量は現在のところ多くなっているが、上関1・2号機および島根3号機が運開した際には、シェアは約30%となることから、99年度比30%程度は削減出来る…などと説明し、理解を求めた。

今回の第一次公開ヒアリングが終了したことから、上関原子力発電所1・2号機建設計画は、中国電力の目標とする今月の電源開発調整審議会上程に向け、大きなステップを踏み出した。

今回の公開ヒアリングでは、地元反対派および山口県内外から来訪した反対派約700名が、会場となる上関町民体育館に通じる道路上で座込みを行うなどの大規模な抗議行動を実施。通産省側が「通行車両が安全に通れるかを確認する」と決定したことから、開会が約3時間30分遅れるという事態が起きた。


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