[原子力産業新聞] 2000年11月2日 第2061号 <3面>

[米国] 遠心分離法試験施設の建設検討

ポーツマス工場設備を利用

米国エネルギー省 (DOE) のB.リチャードソン長官は10月6日、米国内の原子力発電所で使う濃縮ウランの供給を長期的に保証していくため、クリントン政権がオハイオ州パイクトンで遠心分離法ウラン濃縮先端技術実証プラントの建設を検討していることを明らかにした。

この計画では、米ウラン濃縮会社 (USEC) が来年6月までで操業停止することを決めたパイクトン近郊のポーツマス (ガス拡散法) 濃縮工場施設の一部を5年間、冷態状態に置き、国内の濃縮ウラン供給が途絶えた場合に運転再開させることも含まれている。

同長官はまず、米国の原子力発電所が電力需要の約2割を賄っている事実に言及し、「我が国の重要なエネルギー供給源である原子力には、濃縮ウランが自前で確保できるような確かで信頼のおける体制が必要だ」と断言。その上で、この計画は操業停止するポーツマス工場の職員に雇用の機会を与えるとともに、国内に残された唯一の民生用ウラン濃縮工場である USEC のパデューカ工場 (ケンタッキー州) にも21世紀のエネルギー市場で勝ち残るための新技術をもたらすことになるだろうと明言した。

米国における遠心分離法ウラン濃縮技術開発は80年代に DOE によって開始された。今後は5年計画で DOE のオークリッジ国立研究所 (ORNL) が中心となり、敷地内にあるイースト・テネシー・テクノロジー・パーク (ETTP) の既存遠心分離法試験装置を利用して初期エンジニアリング開発などを実施する。作業の比重は1年以内にパイクトンの USEC ポーツマス工場に移し、実証機器類を収容できるよう既存設備を改造する予定だ。

DOE の計画はまた、ポーツマス工場で冷態状態にする必要のない部分と潜在的な運転再開部分の浄化を加速するための段階を設定した。特に、DOE は余剰設備からの機器取り出しは2年計画で、また、これまで高濃縮ウランの工程を扱っていた建屋からの機器搬出は4年計画で実施するよう提案している。

なお、今回の計画発表に先立つ9月19日、DOE と USEC は遠心分離法ウラン濃縮先端技術の研究開発に関する協力協定を締結した。ここでは USEC と、実質的に ORNL を運営しているバッテル社の職員が協力して ETTP 内の既存遠心分離試験装置を使い、1年計画で (1) 遠心分離機の設計 (2) 遠心機の製造および試験のための施設の修理と運転再開 (3) 遠心分離法工場の開発と操業を目指した計画策定−などを実施することになっている。


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