[原子力産業新聞] 2000年11月2日 第2061号 <3面>

[IAEA] 原発用のウラン供給、65年間は安定確保

国際原子力機関 (IAEA) は10月6日、ウィーンで2日から開催していたウラン供給に関する国際シンポジウムを総括し、「原子力発電所用のウラン燃料は今後も安定供給される」との共通認識を表明した。

このシンポには世界40か国からの専門家を始め、アラブ原子力機関、欧州委員会 (EC)、経済協力開発機構/原子力機関 (OECD/NEA)、ウラン協会、国際連合などが参加。「再処理せずに現在の消費率で行けば400万トンの既知ウラン資源で今後65年間はもつ」との見解が複数の発表論文によって強調されたとしている。また、潜在的な未確認資源として見積もられている1,600万トンを利用すれば300年間は大丈夫との意見が出されたが、これを実際に発見・回収するには大がかりな探査努力が必要であることも指摘された。

各国の報告によれば過去10年間のウラン産出量は年間約3万5,000トンで安定しており、そのうち半分はオーストラリアとカナダの生産。カナダでは昨年、高品位のマッカーサーリバー鉱山の操業が始まり、今年だけで4,200トンの生産が見込まれるほか、オーストラリアでは低品位のビバリー鉱山に採掘許可が下りた。昨年1年間を通じて、ウラン市場のスポット価格は下落し続け、低水準に留まっている。

シンポではまた、「ウラン生産による環境や大衆の健康への影響を考慮しつつ原子力開発の継続に必要なウラン供給を長期的に保証するにはどのような活動が必要か?」という点に関心が集中したほか、ウラン生産を計画したり監視したりする上で地元住民と関わっていく必要性についても議論が戦わされた。さらに、2050年までを視野に入れた長期的なウラン供給予測、厳しい環境保全基準に適合しつつ採掘と製錬の効率化を図る革新的な技術も複数、報告されている。このほか同シンポで概ね合意された認識は、ウラン鉱の採掘プロジェクトはその他の鉱物の採掘と変わりはないということだ。しかし、放射線による潜在的なリスクヘの懸念から、実際にはそれらよりも高い監視基準や規制が課せられている。この点に関連してアフリカや豪州、カナダ、米国のウラン鷹産施設の中には、安全性や環境への優れた配慮から表彰を受けたものがあることも明らかにされた。


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