[原子力産業新聞] 2000年11月9日 第2062号 <2面>

[ITER] ITER計画懇談会、誘致問題来月早々に結論

立地条件や地域住民の理解も考慮

原子力委員会 ITER 計画懇談会 (座長・吉川弘之日本学術会議会長) の第13回会合が6日、東京都千代田区の KKR ホテルで開催された。

この日の会合で取り上げられた議題は、 (1) ITER 建設の安全確保の基本的考え方 (2) 日本のサイト候補地の状況 (3) これまでの議論の整理−の3点。このうち、わが国のサイト候補地3か所 (北海道苫小牧市、青森県六ヶ所村、茨城県那珂町) について、フランスとカナダの候補サイトとあわせて、科学技術庁側から現況説明がなされた。特に最近の国内候補地の動向としては、夏の時期には3道県知事が相次いで大島理森科学技術庁長官等を訪れ ITER 誘致を陳情したほか、先月から今月にかけ、各地元自治体が主催して ITER 誘致に向けたシンポジウムを開催するなど、候補地がそれぞれ熱心な誘致合戦を展開している。

これらの国内候補地の状況をめぐって委員からは、「ITER 誘致が各自治体の描く将来計画と整合性のとれたものか」「地元住民の理解・協力を得られるのか。地元住民への十分な説明と誘致プロセスヘの住民参加が重要な要素だ」といった意見が出された。

さらに、これまでの懇談会における議論を整理したうえで、どのような結論を導出するかをめぐって意見交換が行われた。

委員からは、財政問題にからんで ITER 計画が他の巨大科学プロジェクトと比較される恐れがある中で、ITER の意義を明確にしておくことの重要性や、学術研究と国家的プロジェクトは本来切り離して考えるべきであり、ITER 計画誘致が核融合の基盤研究に影響を与えるべきものであってはならないといった意見が多数述べられた。

省庁再編により、核融合研究を所管してきた科学技術庁と文部省が統合されて文部科学省となることから「オールジャパン」での推進体制を取る必要性や、特に若手の核融合研究者集団の考え方が不明瞭であるとして、考え方を確立しておかないと研究基盤が脆くなるのではとの指摘もなされた。国家的プロジェクトとして成功するためには、事前の段階で核融合研究に対する理解が前提となるべきとの意見も出された。

原子力委員会から会議に出席した遠藤哲也委員も、ITER 誘致が他の核融合研究に影響を及ぼすことがあってはならない点や、ITER 計画のサイト誘致は一種の国際機関誘致に共通するところがあり困難も予想される点などを指摘。

こうした意見を踏まえて、12月初めにも予定される次回会合では、焦点となる国内への誘致の是非やその立地条件、核融合関係者の共通認識の確立などを考慮したうえでの懇談会報告書案を審議することとなる。なお、会議終了後、吉川座長は、「核融合科学者の声をできるだけひとつにしていく必要があるし、(巨大科学プロジェクトには) リスクがあっても大きな意義があることを前提として、研究者を勇気づけられる報告書としたい」とコメントした。


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