[原子力産業新聞] 2000年11月9日 第2062号 <3面>

[OECD/IEA] スウェーデンのエネ政策で報告書

原子炉の早期廃止は「閉鎖条件を明確に」

経済協力開発機構/国際エネルギー機関 (OECD/IEA) は10月20日、「スウェーデンは経済的な炉寿命をべースに原子炉の早期閉鎖条件を掘り下げるなど、原子力政策を一層明確化する必要がある」と指摘する一方、脱原子力を続けるか否かに係わらず天然ガスの利用拡大を勧告する報告書を公表した。

「スウェーデン・2000年評価」と題したこの報告書で、IEA は同国のエネルギー政策全般について評価しているほか、環境保全問題との係わり合い、エネルギー効率、電力需給などについてそれぞれ検証。「原子力」の項目ではスウェーデン自身が定めた判断基準を使って同国の脱原子力政策の実効可能性について審査している。

天然ガスや石炭火力は温室効果ガスを排出し、水力発電は新たな開発が難しいことから、スウェーデンは原子力を代替する主力電源として再生可能エネルギーを挙げているが、報告書は「中心的な問題となるのは原子力ではなく再生可能エネルギーの将来像だ」と言明。スウェーデン自身が設定した作業目標例として、原子炉1基を代替するのにバイオ燃料発電の容量を現在の3倍に増やす必要があるとしている点を紹介しており、「スウェーデン議会が97年に定めた原子炉収用法で原子炉の早期閉鎖をさらに進めていくには、再生可能エネルギーの開発とエネルギー効率の改善を実質的に進展させることが先決だ」と指摘した。

また、こうした点を背最に IEA の報告書は、バーセベック1号機が昨年閉鎖されたのに続き、同2号機についても議会が年内にも閉鎖基準を決定すると予測する一方で、その間にも電力消費量削減や再生可能エネルギー発電の促進、エネルギー効率改善のための研究開発を目的としたエネルギー政策プログラムが策定されるとの見込みを明らかにしている。

しかし、原子炉早期閉鎖に関して議会が定めた基準を考慮していけば、バーセベック発電所以降、2010年までは早期に原子炉が閉鎖されることはないと報告書は結論付けている。また、脱原子力政策の継続とは別にしても「天然ガスは温室効果ガスの排出量を増加させるものの、その利用拡大には経済上、エネルギー保障上の利点があるため大きな価値がある」としてその推進を勧告している。

原子力の検証項目の中で報告書が表明した認識は次のとおり。すなわち、「97年の議会決定は原子炉を早期閉鎖する条件の中に経済的な条件を示していないなどの不備があり、これを一層明確に設定していく必要がある。代替電源としての純粋な競争力がない以上、再生可能エネルギーで原子力を代替することは保証できない。電力の競争市場においては、原子力を代替する電力としては、温室効果ガスを出す石炭火力を含め、実質的には外国の原子力発電など輸入に頼ることになるだろう。」

「早期閉鎖する原子炉の特定など脱原子力のペースを定めるにあたっては、代替電源にかかるコストを削減するためにも市場の状況に一層の注意を払うべきである。市場動向を基本としたアプローチは脱原子力の政治的決断にも矛盾しない上、脱原子力をコストの面で効率的に実行する手助けとなるはずだ。」


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