[原子力産業新聞] 2000年11月16日 第2063号 <3面>

[英国] 新規原子炉建設勧告の動き

議会での審議提案

6日付けで伝えられたところによると、英原子燃料会社 (BNFL) はこのほど、保守党のD.ヒースコート=エイモリ下院議員が新規原子力発電所の建設に関する議会審議を提案したのを受けて、新たな原子炉を建設する必要性について公けの場で議論するよう呼びかけた。

英国では90年代初頭にサイズウェル原子力発電所サイトに3番目の発電所を建設する案が却下されており、それ以後、同国の主要な政党が新規原子炉の建設を呼びかけた例としてはこれが初めてのことになる。同議員は、英国では唯一サイズウェルB発電所 (125万8,000kW、PWR) で稼働しているような次世代型軽水炉を最高8基、建設することによって英国政府は2010年以降の CO2 排出抑制目標を達成することが可能になると述べたと言う。エネルギー相を務めたこともある同議員はまた、「これは我が国のエネルギー問題を解決する可能性の一つ」と強調し、今月中にもこの案件を下院の審議に掛けたいと考えていることを明らかにした。

同議員はさらに、英国政府の気候変動防止プログラムの素案を紹介。この中で CO2 排出量は2000年に一旦、90年レベルの1億6,800万トンから1億5,220万トンに減少するものの、2010年には1億5,630万トン、2020年には1億6,490万トンと増加していくと予測されており、その原因の一端は原子力開発計画の縮小にあると特定されたことを伝えている。

英国の原子力発電所は現在、総発電電力量の25%を供給しているが、その3分の1は BNFL が所有するマグノックス炉の貢献によるもの。BNFL は声明の中で、これらの原子炉無しで CO2 の削減目標を達成しようとすれば、英国のすべての一般車およびタクシーが毎週1日半の走行規制を受けることは間違いないと断言している。しかし同社は最近になって、2基を除く国内の全マグノックス炉の余寿命が今後10年を切ったと発表しており、それらをどのようにリプレースしていくか英国が検討を始めなければならない時期に来ていること、同社としてもこの問題に関して幅広く、大々的な議論が展開されることを切望しているとの認識を明らかにした。

BNFL はまた、英王立協会と議会下院の通商委員会が昨年、将来の英国のエネルギー政策に原子力が含まれる可能性も残すよう、十分時間的な余裕を持って新規原子力発電所の建設について検討すべきだと勧告したことに言及。さらに正確な言い方では、「今後20年間に新たな原子炉が必要とされるかもしれない長期的な計画のために正式な認定をしておくべきだ」というのが下院通商委の意見だったことを伝えている。

同社はさらに、ウエスチングハウス社や ABB 社の原子力部門を同社が買収したことに触れ、今や同社は原子炉設計およびサービスの国際市場において大きな役割を果しており、新規原子炉の建設に不可欠な能力や技術、インフラのすべてを備えている点を強調。目新しい議題ではないにせよ、この件について国レベルで議論する必要性は日に日に高まっていると訴えた。


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