[原子力産業新聞] 2000年11月23日 第2064号 <1面>

[長期計画] 新長期計画まとまる

「来世紀へ政策の支え」- 国民のメッセージとともに

原子力委員会長期計画策定会議(座長・那須翔東京電力相談役)は22日、原子力委員会に長期計画の最終報告書案を提出した。報告書案は、20日の策定会議で国民からの意見をどう反映するかの議論を踏まえ、最終的にとりまとめられたもの。那須座長から大島理森委員長に最終案が手渡された。新長計は、近く委員会決定を経て、閣議に報告される。

この日は、来年1月の省庁再編による内閣府への移行を控えた原子力委員会が、科学技術庁から西新橋の物産ビルに移転して初めて開かれる会合。大島委員長・科学技術庁長官をはじめ、藤家洋一委員長代理ほか各委員、那須策定会議座長らが出席した。

まず、那須座長が、8月にまとめられた長計案に対する50日間にわたる国民からの意見募集や、3回実施した「ご意見をきく会」について報告。773名から190件に及ぶ広範多岐にわたる意見を重く受けとめていると前置きしたうえで、省エネルギーや再生可能エネルギーの利用を推進すべきだとの意見が多く寄せられたことや、長計を踏まえて原子力委員会が毎年、原子力の重点施策を示したり、国民に分かりやすく原子力政策を説明する資料を整える必要性を指摘した意見も重要なものだと紹介した。今後の原子力委員会で対応を検討するよう要請した。

那須座長の報告を受けた大島委員長は、「新長期計画は21世紀の日本の原子力政策を支えるもの」と強調し、早い時期に原子力委員会としての見解をまとめたいとの考えを示した。

今回の長計策定は、従来の改訂作業の延長線上にはなく、21世紀の原子力研究開発に求められる理念を明らかにすることから出発するとされ、それとともに、原子力関係者への具体的指針にとどまらず国民や国際社会に向けたメッセージの意味を持たせるとの狙いがあった。「原点に立ち返っての議論が必要だった」との意見にみられるように、高速増殖炉「もんじゅ」などでの事故や不祥事の後、原子力対する国民の不安と不信の中で原子力の開発利用の意義を再確認することも求められていた。しかし、審議開始数カ月後には JCO 臨界事故が発生、長期計画の策定さえ可能かを心配する声も聞かれるようになった。

こうした状況で、進められた計画策定だったが、社会全体が転換期にあり多様な選択肢を求める中で、原子力発電を基幹電源に燃料サイクルを原子力政策の基本とするといった方針は堅持するものの、民間のイニシアティブや計画の柔軟性・多様性の確保を重視するとしたためか、エネルギー供給や環境問題に原子力が果たす役割に照らして、わが国の政策としては力強さに欠ける印象を残す結果となった。

「新長期計画に盛り込まれた内容をフォローする仕組みをどのように構築していくのか」(遠藤原子力委員)も含め、新しい原子力委員会として取り組まなければならない重要な課題は多い。


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