[原子力産業新聞] 2000年11月23日 第2064号 <2面>

[国際会議] 超臨界炉で国際シンポジウム

革新型炉に新たな潮流

超臨界軽水冷却原子炉を取り上げた国際シンポジウム「SCR-2000」が6日から8日まで東京大学で開催され、日本、米国、ドイツ、カナダ、ロシア等から約100名が参加した。超臨界水の原子炉への応用に関する炉設計、熱流動、放射線科学、材料損傷や腐食等に関する発表が行われた。

東大工学系研究科の教官グループは、日本学術振興会の未来開拓事業の一つとして高温高圧、強放射線等の極限環境下での水化学、材料、熱流動等について研究を行ってきており、シンポジウムはその成果の発表と、国際的な意見交換の場として企画運営された。

会議初日には、シンポジウム主催者の勝村庸介教授が挨拶。続いて、超臨界水冷却の原子炉概念を約10年前から研究してきた岡芳明東大教授が貫流型超臨界圧軽水減速冷却炉の概念についてこれまでの設計研究のまとめを発表。炉心、タービン系、安全系の設計や事故過渡解析、プラントの制御と起動、確率論的安全評価について解析コードを開発研究した成果を述べた。岡教授が提案しているシステムは、PWR 型の原子炉圧力容器と超臨界火力発電で用いられている貫流型のタービン系を組み合わせたもので、格納容器や非常用炉心冷却系は BWR 型と類似のものが用いられる。超臨界では給水ポンプで超臨界に加圧した冷却水を炉心で加熱し、そのままタービンを駆動できる。気水分離や再循環が不要で冷却水のエンタルビーも高いので、システムがコンパクトで単純になる。熱効率も44%程度が期待できる。冷却水出口温度は高温だが、原子炉容器、ポンプ、タービン、配管等、主要な機器は全て軽水炉と超臨界圧火力機器で経験済の温度以下であるのが大きい特徴である。出力ではなく寸法の点で、この原子炉は最もコンパクトとなる。

今回の岡教授の発表で注目されたことは、従来の超大型出力を指向した設計のみならず、100万キロワット程度以下の出力で超臨界圧火力タービン系との機器との相性をより向上させる設計を今後検討し、これにより主要機器の調達時の市場競争によりコスト低減を図る可能性を指摘した点。これは従来の大出力化によるコスト低減法、小型モジュラー炉が提案している原子炉モジュールの大量生産によるコスト低減法に対して、主要機器レベルでの市場競争を利用しようとするもので、上記の2つの方法に対して第3のコスト低減法の提案といえる。情報技術の利用により他産業ではこの方法が広く採用されようとしており、それを原子力に持ち込もうとする点で注目される。貫流型超臨界圧原子炉の概念は、タービン系も含めてこうした主要機器の調達による製造法との相性がよいという。

研究開発課題としては、学問的には未来開拓事業で研究されていて超臨界水の放射線分解に伴う水質管理と材料腐食、その生成物の移行が挙げられる。

なお、軽水炉で問題となっている応力腐食割れは、超臨界圧火力では経験されていない。火力では、冷却水中の酸素濃度を下げて酸化腐食の防止に主眼が置かれている。開発にあたっては、最終的には試験炉の建設が必要になると考えられる。

貫流型超臨界圧原子炉の設計には次のような特徴があげられる。 (1) 炉心冷却水流量が軽水炉の約10分の1で、炉心での流速の確保のため狭い燃料棒間隔としている (2) 過渡時の燃料被覆管温度を直接計算求められるようにして、限界熱流束の制限を設けない。これにより低流量の高温炉心が設計可能となった (3) 炉心軸方向に冷却水密度が大きく変化するので、多数の太径水減速棒を用いて減速を確保すると同時に濃縮度やカドリア濃度差により出力分布の平坦化をはかる (4) 主給水ポンプ停止時には、タービン系や ECCS ポンプにより炉心流量を確保する−など。

一方、カナダや欧州でも、近年超臨界水冷却原子炉の研究が始まっている。EU の予算で「高性能軽水炉」として始まった超臨界炉の研究開発計画について、ドイツ・カールスルーエ研究所より発表されたほか、カナダからは超臨界圧 CANDU 炉の研究開発について発表された。ロシアからは、物理エネルギー研究所より超臨界水冷却の研究の概要として伝熱や腐食に関する研究結果が紹介された。同研究所には、超臨界水の伝熱ループが複数ある。

7日には、水野三重大学名誉教授が超臨界圧火力発電の水質管理を講演したほか、超臨界圧水の物理・化学的性質、超臨界水中の化学反応、超臨界圧・亜臨界圧中での材料腐食や応力腐食などに関する発表が行われた。


Copyright (C) 2000 JAPAN ATOMIC INDUSTRIAL FORUM, INC. All rights Reserved.
Copyright (C) 記事の無断転用を禁じます。