[原子力産業新聞] 2000年11月30日 第2065号 <3面>

[OECD/IEA] 世界エネ予測で、将来の原子力の役割を強調

CO2 削減に威力

経済協力開発機構/国際エネルギー機関 (OECD/IEA) は21日、「世界エネルギー予測・2000年」を正式に発表し、「今後20年のうちに世界の CO2 排出量は60%増加する」と警告するとともに、「これに対処する政策が数多く取られていけば、将来のエネルギー・ミックスの中で原子力が果たす役割は一段と大きくなるだろう」との見解を明らかにした。

この報告書の記者会見は、同じ時期に気候変動枠組み条約・締約国会議 (COP6) が開催されていたのに合わせて、オランダのハーグで行われた。IEA はまず、「意にそぐわぬ気候変動を避けるためには国際コミュニティが以前にも増して確固たる行動を取っていく必要がある」と断言。基本シナリオによると2020年までに世界のエネルギー消費は年間2%の割合で着実に増えていき、結果的にこの期間のエネルギー需要の伸び率は57%となる。そうなるとどう努力してもエネルギー部門の CO2 排出量は60%に達すると予測している。この場合の増加量の大部分は途上国からの排出によるものだが、その後は大国も貧しい国も同様、ガスおよび石油の生産業者数の削減に加速度的に依存していくことになると指摘。これと並行して、世界全体の総発電量における原子力のシェアは97年の17%から2020年には9%まで落ち込むことが予想されるが、IEA としては、気候変動を抑えるために下される決定の多くが将来のエネルギー・ミックスにおける原子力の役割を一層拡大することにつながると予測していることを明確に示した。

記者会見の席では具体的に、R.プリドル IEA 事務局長が COP6 で進行中の議論に言及しつつ、温暖化を防止するための明らかな対策として3つの代替シナリオを次のように説明した。すなわち、 (1) 排出権取り引き=京都議定書における目標値達成のため国家間の排出権取り引きを認めた同議定書の条項を最大限に活用する策。IEA としては、このシステムを効果的に使った場合の排出権価格を CO2 1トンあたり32米ドルと見込んでいる (2) 輸送による排出量の削減=自動車および飛行機による貨物輸送をさらに制限する方法。ここでは代替燃料の使用や輸送形態の変更、炭素税の導入など燃料効率の拡大が含まれるが、IEA は「この分野での努力は2010年以降にならないと効果が現れない」との結論を提示している (3) 電源構成の変更による方策=原子力を活用するプログラムを含めて4例が考えられる。原子力発電所の運転寿命を2020年まで拡大すれば、この期間の CO2 排出量は全体で7%削減できる一方、石炭火力から天然ガスヘの切替えでは10%の削減が可能。再生可能エネルギーの利用拡大では6%、コンバインド熱電 (CHP) の利用の拡大では削減量は2%に留まっている。

結論として IEA は、どのオプションを取るにしてもそれ相応の努力が必要であると述べており、原子力の場合は一般市民による反対運動に対処しなければならないと強調。再生可能エネルギーで問題となるのはコスト高と物理的な制約であり、化石燃料オプションではガス資源や輸送システムの適切さで懸念が生じるとの考えを示した。


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