[原子力産業新聞] 2000年12月7日 第2066号 <2面>

[エネ庁] 仙台で「1日資源エネ庁」開く

女川町と2元中継で結び議論

通産省資源エネルギー庁などが主催する「1日資源エネルギー庁 in 宮城」が5日、宮城県仙台市で開催された。会場となった仙台市民会館には約1,200人が集まり、我が国のエネルギー利用の現状や、今後の課題に関する対談や論議に熱心に耳を傾けた。

浅野史郎宮城県知事が「宮城県は電力の『移出県』であり、今後もその位置付けは高まる。効率的なエネルギー利用や環境に負荷を与えないエネルギー利用も実践の段階を迎えている。県としても十分に取り組みたい」と、ビデオによる挨拶を述べた後、河野弘文エネルギー庁長官と科学ジャーナリストの中村浩美氏が対談を行った。

河野長官は、第1次オイルショック以降産業部門の石油消費は横ばいなのに対し、民生・運輸部門では消費が2倍にまで伸びている点に触れるとともに、原子力と天然ガスを代替利用したため、エネルギー利用での石油のシェアは77%から51%に下降したと述べた。また、セキュリティ、環境保全、経済性といったエネルギーに関する課題の中で環境保全が最も高いハードルだとしたうえで、発電時に CO2 を排出しない原子力発電所を着実に建設・運転することの重要性に触れる一方、当初2010年までの目標としていた原子力発電所の建設計画基数が下万修正された点を挙げ、新規立地が進まない状況を指摘した。

続いて、内山洋司筑波大学教授、勝又三千子主婦連合会仙台支部会長、プロデューサーの残間里江子氏、藤冨正晴資源エネルギー庁官房審議官の4名によるパネル討論が、会場参加者へのアンケートを交えて行われた。「今後のエネルギー問題に対して誰が中心的に対処すべきか」との設問に対して、会場参加者の52%が「政府」、33%が「国民」と回答。さらに、「生活の快適さを下げてもエネルギー消費を抑制すべき」と答えた参加者が24%だったのに対して「快適さを維持できる範囲でエネルギーを節約すべき」との回答は71%だった。こうした結果についてパネリストからは、「国民の省エネ努力の効果が実感できる情報も含め、政府から国民に対してエネルギー問題に関する情報提供を一層進めてほしい」「経済が停滞していても、昨年のエネルギー消費は増加した。国民が省エネの必要性を理解はしても実践につながらない難しさがある」などの意見が出された。

「今後の需要増に対してどのエネルギー源が重要か」との問いには、32%が「原子力」と答え、「風力・太陽光など」は21%だった。パネリストからは、新エネルギーを挙げる人数が比較的少ないことを意外としながらも、原子力発電の役割に対して現実的な見方をしている参加者が多いのではとの指摘があった。

こうした状況を踏まえ、内山教授は、「21世紀の我が国は、エネルギー大量消費の構造を改善し、エネルギー政策立案に国民が参加していくことが求められる」と強調した。

このほか、女川原子力発電所と会場をリアルタイムの2元中継で結び、安住宣孝女川町長や同町住民らが、電力の生産地から消費地へのメッセージを送るなどの試みが行われた。


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