[原子力産業新聞] 2000年12月21日 第2068号 <7面>

[食品照射] 放射線殺菌でシンポ

香辛料への適用にむけ

放射線による食品照射の可能性を検討している日本食品照射研究協議会は15日、東京都千代田区で香辛料の放射線殺菌をテーマとしたシンポジウムを開催した。

今月4日には、全日本スパイス協会が厚生大臣に対し香辛料の微生物汚染低減化を目的とした放射線照射の許可を求めて要請書を提出したこともあり、参加した専門家からタイムリーな発表が行われた。スパイス協会の技術委員会委員長も務めるカネカサンスパイスの河智義弘氏は照射による香辛料の殺菌について講演。食品業界では HACCP と呼ばれる食品衛生管理方式導入の動きが強まり、製品だけでなく香辛料等の原料段階でも菌数の低減を含めた品質要求が厳しくなっていると現状を紹介。香辛料の蒸気殺菌法では香りなどが劣化するのに対して放射線殺菌法では香りが保持される分析データが多数得られているとして、我が国でも香辛料放射線殺菌法の実用化が待たれると述べた。消費者団体の立場から講演した日本生活協同組合連合会の渡辺秀一氏は、照射食品が安全だという安心感を醸成するためには、関係者が消費者との対話を十分に行い、暖昧でない情報を提供することが必要だとした。講演に続く質疑応答の中で、「ポリフェノール等の香辛料に含まれている健康因子も数十キログレイの照射でも破壊されないとのデータが得られている」「香辛料のように乾燥した食品では放射線による化学変化が起こりにくい」「照射済みという表示をしたうえで、消費者と対話を図ることが必要」などといったコメントも出された。


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