[原子力産業新聞] 2000年12月21日 第2068号 <7面>

[放射光] 利用の可能性探る

農生物・医学などに応用

分野別に放射光利用の可能性を探る研究会が19日、弘前市の弘前大学みちのくホールで、日本原子力産業会議の主催、青森県と六ヶ所村の後援により開かれた。

放射光は、物理学のほか、生物学、農学、医学等広範囲の分野に応用可能で、新材料や新技術の創出、農生物・医療技術の高度化に大きく貢献するものと期待されている。こうしたことから青森県では、地元への放射光施設設置実現に向け基礎調査を進める方針を決定。幅広い分野の専門家で構成する検討委員会「むつ小川原地域における放射光施設整備検討委員会」(委員長・大桃洋一郎環境科学技術研究所所長) を発足させた。

この日の研究会は、同委員会が、将来、放射光施設の利用者となる研究者を発掘し、組織化を図ろうと、分野ごとの研究発表や意見交換の場として設けたもので、理工学、医学、農生物の各分野での講演が行われた。

千川純一兵庫県立先端科学技術支援センター所長は、「放射光利用の展望−世界の潮流から」と題して講演。「放射光から出る X 線は、従来の X 線管に比べると3桁も明るい光が得られる」としたうえで、「情報量でいえばラジオの10キロヘルツからテレビの10メガヘルツに、分解能でいえば肉眼ではせいぜい0.1mmだったが、電子顕微鏡ではオングスト□ームの時代に入った」とし、数字が3桁変われば世の中が変わるとする持論「3桁技術革新論」を述べた。放射光による毛髪の回折パターンによる乳がんのスクリーニングについても、「近い将来、髪の毛を郵送するだけで、乳がんの検診ができる可能性もある」と示唆した。

さらに、森本幸生姫路工業大学助教授は、放射光技術によるタンパク質立体構造解析について、超強力・高輝度の放射光を利用したタンパク質結晶構造解析のメリットは短い測定時間で網羅的に構造解析が可能になるなどとした。


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