[原子力産業新聞] 2000年12月21日 第2068号 <8面>

[原研] トリチウム除去試験に成功

大規模空間でも有効

核融合炉の安全性を実証する一環として、燃料となるトリチウム (三重水素) が万一、室内に漏洩した場合に安全を確保するための試験研究を進めてきた日本原子力研究所 (村上健一理事長) は、このほど、日米核融合研究協力の下、ロスアラモス国立研究所で、国際熱核融合実験炉 (ITER) と同じ規模の室内 (3000立方メートル) に漏洩したトリチウムを除去する試験に成功した。

核融合炉は、燃料供給が停止されると核融合反応も速やかに終息するという固有の安全性を持っている。一方、放射性物質である気体のトリチウムを燃料として用いることから、その十分な安全を確保することが核融合炉を実現する上で重要な課題となっている。トリチウムは通常、気密の装置や容器の中に安全に閉じ込めて扱われるか、配管の破断等により万が一、室内へ漏洩した場合、換気装置を停止して気密を確保し、トリチウムを室内に閉じ込めると同時に、トリチウム除去設備によって室内空気中からトリチウムを除去する。

トリチウム除去設備は、空気中のトリチウムを含む水素成分を触媒により酸化させ、生成した水分を吸着除去することを原理としたもので、その技術は確立しており、世界のトリチウム施設で広く一般に用いられている。

原研のトリチウム安全性試験装置やトリチウムプロセス研究棟設備等により、50立方メートル程度の小規模空間におけるトリチウム除去設備の性能は実証されており、この小規模空間での性能実証結果から、ITER の大規模空間でのトリチウム除去について予測することは十分に可能。しかし、安全の立場から、ITER と同じ大規模空間で実験を行い、トリチウム除去設備の性能を検証することが必要とされていた。

今回、ロスアラモス国立研究所の所有する 3000立方メートルの実験室を用い、トリチウムを室内に放出して ITER 規模の大型トリチウム除去設備の性能を実証する日米共同試験に成功し、安全性をより確かなものとするデータを取得した。


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