[原子力産業新聞] 2001年1月5日 第2069号 <12面>

[東北電力] 女川3号機、建設が最終段階に

新世紀、先陣切って運開へ

南三陸金華山国定公園に指定されている宮城県牡鹿半島の南部に位置する東北電力・女川原子力発電所の3号機が建設最終段階を迎えている。新たな世紀を迎 え、わが国の商業炉として先陣を切って来年1月に営業運転開始する予定となっている。今号で同3号機の建設状況を紹介する。


総合進捗率は94%に

天然の恵み豊かな牡鹿半島にあって、自然との共存、クリーンさに配慮しながら、女川発電所はすでに1、2号機が稼働している。1号機は1984年6月に営業運転を開始し、2号機は1995年7月に戦列入りしている。その間大きなトラブルもなく稼働しており、96年度からは、設備運用の効率化につとめ、1、2号機あわせて設備利用率は平均80%を超えている。

3号機はこうした安全実績を踏まえて建設されているもので、そもそも1992年9月に女川町議会、牡鹿町議会がそれぞれ定例議会本会議において「東北電力 (株) 女川原子力発電所3号機早期着工促進」に関する決議を議決し、増設の動きが具体化した。

翌年8月には東北電力から宮城県および女川・牡鹿両町に対し、3号機建設計画について「女川原子力発電所周辺の安全確保に関する協定」に基づき協議申し入れた。同年11月に通産省が第一次公開ヒアリングが女川町で開催、その後、1994年3月には電源開発調整審議会に上程、同年5月に原子炉設置変更許可申請が行われた。

95年8月には原子力安全委員会が第二次公開ヒアリングを開催し、翌96年4月には原子炉設置変更許可が下りている。同年9月に着工以来、現在までに順調に工程をこなして94%の進捗率となっている。

建設は、96年10月に基礎掘削を開始し、98年12月に炉容器の据え付けを行った。

運開にむけ最終調整へ

女川原子力発電所3号機は、原子炉建屋、タービン建屋、サービス建屋等の建物並びに排気筒、開閉所等の構築物や機器で構成され、運転・保守の容易さや安全性の確保に十分な配慮を行っている。

格納容器は2号機と同様、マークT改良型原子炉格納容器を採用、作業員の被ばく線量低減、作業効率の向上等を目的として容積の広い格納容器となっている。また海水熱交換器建屋を採用し、原子炉補機冷却系やタービン補機冷却系等の熱交換器を収容、同時に海水ポンプを収容して、配管の長さを縮小し、保守性の向上を図っている。さらに海水熱交換器建屋の採用による原子炉建屋の空間スペースの有効利用を図るため、原子炉建屋内に復水貯蔵槽を設置するなど、敷地条件等に応じた設計の最適化をはかって信頼性を高め、定期検査期間の短縮化と、それにともなう作業員の被ばく線量低減を可能としている。

今後3月末まで系統別の性能試験を行い、4月にも燃料を初装荷。

以降、段階的に出力を上げながら、性能の総合的な試験に移行することになっている。営業運転開始は2002年1月の予定。

正攻法で確実に

3号機建設を陣頭にたって指揮してきた平田和也建設所長に、これまでの建設状況や地元との関係、運転開始にむけての抱負などを聞いた。

「系統別の試還転を行っている段階に入って所期の性能が発揮できるか、いまから3月まで正念場だ」と身を引き締める。

建設工事自体は、1、2号機の経験もあり「順調だった」と振りかえりながらも、性能試験を通じて得られる不具合など、「ひとつひとつ正攻法で解消しながら確実に進めていく」と語る。

「4月に燃料装荷の予定であり、その後総合的な性能試験に入る。燃料が入れば通常の原子力発電所として扱われる。確実に進めなければ」と力を込める。

「建設の最盛期には1日あたり約 2,000人が従事していた。地元町、隣接町を含めて県内からの従事者がその6割以上を占めていた。統計のとり方もあるが、そこにそれだけの生活があるということだ」という。建設にかかわる資機材の調達も含めて、地元への波及効果に配慮した。現在は最盛期は過ぎたが、昨年の10月時点、建設関係での従事者は1日で延べ 1,400人強となっている。

多くの従事者が活発に行き交う現場。

「ゆずりあいの心で交通マナーを守り、現場ではかならずあいさつをする。基本的なことを徹底した。万一、現場や周辺で事故があれば、地元や隣接の役場に即通報するなど連絡は密にした」と明かす。細かい目配りが欠かせない。

「地元とは、全戸訪問を行うなど、人と人とのつながりを大切にしている」とは、3号機の建設以前からの女川原子力発電所立地以来、心がけてきた取組みだ。今もわかりやすいパンフレットを携えて発電所職員が全員で行っている。

電力の部分自由化もはじまった。

「安全を最優先に、コストで他の電源と競合できるよう努めていくことも必要だ」と、先を見据える。


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