[原子力産業新聞] 2001年1月25日 第2072号 <3面>

[IAEA] 劣化ウラン弾の影響懸念で詳細調査の必要性強調

10年前の湾岸戦争や近年、ユーゴスラビアのコソボなどバルカン半島紛争で用いられた劣化ウラン弾による環境と人体への影響が懸念されていることに関し、国際原子力機関 (IAEA) のM.エルバラダイ事務局長は11日、「信頼できる結論に達するまでには詳細な調査が必要」と警告する声明を発表した。

湾岸戦争やバルカン紛争ではウラン濃縮の副産物であるウラン238同位体を多く含んだ劣化ウラン弾が使用された。その際、現地に駐留した米軍や NATO 軍兵士達の間で原因不明の吐き気や下痢、白血病などの健康被害が現れたと伝えられており、これらと劣化ウラン弾との因果関係が問われているもの。

すでに99年5月に国連環境計画 (UNEP) は国連事務総長の要請を受けてバルカン紛争による環境への影響を調査するタスク・フォースを設置。ウラン弾の使用も可能性の一つと示唆される結論が出たことから、UNEP はさらにコソボ自治州での実態調査に乗り出していた。IAEA は UNEP の招聘によりこの調査に専門家を派遣しており、昨年11月の調査でも米国、フィンランド、イタリア、スイス、スウェーデン、英国の専門家を含む14名のチームに参加。NATO 軍がウラン弾を使用したという11か所を訪れて土壌や水、植物、牛乳などのサンプルを採取し、現在、IAEA のサイバースドルフ研究所など欧州の複数の研究施設で分析を行っている。

しかし調査に必要な情報が不足しているため、IAEA としてはこれまでの研究レベルで科学的な結論を導き出すには時期尚早であり、さらなる現地調査が必要だと指摘。エルバラダイ事務局長は、「IAEA は国際的な放射線安全基準に基づいて法定の責任の範囲内で今後も UNEP や WHO などの国際機関と連携して包括的な評価作業にあたりたい」との意欲を示した。


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