[原子力産業新聞] 2001年2月15日 第2075号 <1面>

[東京電力] 新規電源開発凍結から原子力は除外

平沼経済相、原子力の重要性強調

東京電力が8日、景気低迷などの理由により、同社の新規電源の開発計画を原則3〜5年間凍結する方針を明らかにしたことについて、平沼赳夫経済産業大臣は9日閣議後の会見で、東電から原子力発電所建設については「(従来の) 計画通りやるという事も聞いている」とした。また同日行われた繰上げ次官会議後の会見で、広瀬勝貞事務次官は同問題に対する記者団からの質問に対し、東電から「東通や福島第一の7・8号機といった原子力発電所の建設計画については、引き続き促進していくと承っている」と述べ、これらのことから東電の新規電源開発凍結計画には、原子力発電所は含まれないことが明らかになった。

会見で平沼経済相は、「電力は安定供給が第一義と思うが、電力会社がそういう判断をしたということは、安定供給が担保されるという前提で、供給バランスを見て決断したものと思う」と述べ、東電の判断は、あくまで安定供給を第一義とした上でのものという点を強調。建設凍結により、米国・カリフォルニアのような事態になる事はないとの認識を示した。

さらに原子力発電所の建設計画の凍結が行われると、「COP3 との絡みで大変な事になると思うが」との質問に対して同相は、「東京電力サイドからは、原子力発電所は計画通りにやるということも聞いている。私どもはそういう形で東電がやってくれると思っている」とした。

一方、広瀬事務次官は、同問題と電力自由化との関連について「各社とも設備投資を進めていく上で、一番大きな要素は将来の需給。厳しく見通しながら、かつ設備の効率的な活用などについても、さらに厳しく意を用いる必要性が出て来ている」と述べた。また今後の原子力政策に与える影響については、電力の効率的、安定的供給と環境整合性を考えると原子力発電は非常に大事なものであるとの認識を示し、今後も安全に十分留意しながら原子力を推進していく方針に変わりはない事を強調した。

東電では8日に、「最近の電力需要と新規電源開発の凍結について」として、最大電力が1996年7月以降更新をせず、かつ同社の供給力は96年からの4年間で500万kW 程度着実に増加している現状や、(1) バブル崩壊後の経済成長率低下に伴い、電力需要の年平均増加率は1%台になった (2) ガス冷房ストックは毎年50万トン増加し、89年から10年間で全国平均2.7倍となった (3) 96年度以降の自家発電設備容量が、3年間で135万kW 増加 (4) エアコン1台あたりの消費電力量は、この10年間で約半分に低下 (5) 負荷平準化努力により、この4年間でピークシフト量が114万kW 増加 --- などの需要構造の変化を挙げ、経済の低成長を背景に需要鈍化している中で、需要抑制要因の影響が顕在化したと結論。現行計画のまま電源開発を進めていくと将来的に大きな過剰設備を抱えることにもなりかねないとのリスクや、経済の低成長、構造的な変化などにより、従来と比べて需要の伸びが低くなると予想している。そのうえで「自由化で電力市場の競争が本格化する中で、一層のコスト低減を図るには、設備のさらなるスリム化が必要」と判断、「当面の需要増に対応できるだけの設備は確保している」ことから、現在計画している新規電源の開発計画を抜本的に見直し、原則3〜5年、地点によってはそれ以上、電源開発を凍結すると発表していた。


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