[原子力産業新聞] 2001年2月15日 第2075号 <1面>

[ITER] 国内誘致めぐり核融合研究者間で議論

国際熱核融合実験炉 (ITER) 計画の国内誘致をめぐる論議が大詰めを迎える中、我か国の核融合研究者が集まり同計画について議論する会議が10日、11日の両日、東京都内で開かれた。

会議の趣旨は、ITER の誘致問題を契機として、大学、核融合科学研究所、日本原子力研究所、国立試験研究機関等の核融合研究者が、我が国全体の核融合研究のあり方や将来展望での相互理解を一層深めるとともに、ITER 計画の意義の明確化や実現可能性を科学技術的視点から検討するというものだった。会議にはいわゆる核融合コミュニティから関係者約350名が出席した。

会議初日には、大学、核融合科学研究所、原研などから国内の核融合研究や ITER 計画の現状について紹介を行った。2日目は ITER の技術的な実現可能性や焦点となっている日本への誘致をめぐる議論に時間が費やされた。

2日間の日程を終えた主催者側の幹事会は記者会見の席で、会議の概要と成果を明らかにした。高村秀一名古屋大学教授を中心とする幹事団は、省庁再編による文部省と科学技術庁の統合を機会として、両省庁下で進められてきた核融合を研究者たちが「一致団結」して推進していくうえで相互理解を図る場にしたかったと説明。「参加者からは多種多様な意見」が出される中で、あらためて ITER 計画の意義と実現性を研究者間の議論で確認できたことが大きな成果だったと強調した。

主催者側では2日間で十分に議論できなかった点については、参加者に対してアンケート用紙を配布し、ITER 国内誘致の是非を含め率直な意見を提出してもらうことにした。幹事団は集められた意見を早い時期に集約したいと語ったが、それをどのように処理していくかは未定だとするにとどまった。

現在、最も注目されているのは ITER の誘致に日本が乗り出すべきかどうかの最終判断。

詳細は明らかにされなかったが、この点では会議でも相当激しい議論が繰り広げられたものと予想できる。

会議の結果をどのように政府に報告するのかとの記者の質問に対し、幹事からは「会議はあくまでも核融合研究者が自発的に開いた学術的な意味合いが強いもの。行政側から要請されたわけではない」と答えた。今回の会議には ITER 計画懇談会や核融合会議の要員も参加していることから、幹事団では「こうした先生方が政府の審議会に対してしかるべき形で会議の状況を話されるのではないか」と示唆している。

ITER 計画懇談会は先月末に最終会合が開催される予定だったが、意見調整がうまくいかず延期されたと伝えられている。今後の日程を見ると、7月頃までには国として ITER を正式に国内誘致するかどうかを意思表示する必要がある。カナダやフランスと違い、日本は国内候補地3か所を絞り込むという難題も抱えている。こうした状況を考慮すると、原子力委員会としての決定を受けて早期に政府が国内誘致への判断を下さなければならないのだが。

ITER 誘致に向け動き出すまでにはもうしばらく時間が必要のようだ。


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