[原子力産業新聞] 2001年2月22日 第2076号 <3面>

[米国] 原子力協会、5年以内の新規発注を予測

「原発の市場価値、上昇」

米原子力エネルギー協会 (NEI) が3日付けで伝えたところによると、同協会はウォール街の財務アナリスト達に対するブリーフィングで、米国で稼働する103基の原子炉が昨年に稼働状況、安全性ともに良好な実績を残したことを報告するとともに、今後5年以内に米国で新規の原子力発電所が発注されるとの予測を明らかにした。

ブリーフィングを担当した NEI 幹部はまず、最近カリフォルニアや他の州で発生した電力不足は、電力の競争市場において原子力のためにまったく新しい機会が創出されつつあるという変化を反映したものだと指摘。このような条件の変化によって今後10年間の後半にも新たな原子力発電所の建設が開始されるとの予測にはますます信憑性が高まっていると強調した。

また、NEl の理事会会長でコンステレーションーエネルギー・グループの社長も務めるC.ポインデクスター氏は、「昨年、原子力発電所の市場価値は大幅に上昇しており、今後もさらに上がっていくと我々は予想している」と言明。その根拠として次のような点を指摘した。

すなわち、(1) 原戸力発電所の昨年の平均設備利用率は99年実績から4ポイント増加して90%に達する見込み (2) 年間の総発電量は99年実績の7280億kW時を5%上回り、シェアは20%ほどになると予想される (3) 発電コストが石炭火力を下回る1.83セント/kW時となり、大規模で設備拡大が可能な電源の中では最も低価格 (4) 安全実績も過去最高レベルに達した (5) 昨年3月にカルバートクリフス発電所で初めて運転認可の延長が許可された後、全米で3分の1の原子炉の所有者が同様の認可更新を検討中と発言 (6) 所有権や操業を数社の大企業に統合する動きが続いており、原子力はそれらの企業の基幹事業となっている−など。

さらに NEI の事業運営副理事長であるM.ファーテル氏は、「10年余に渡った準備期間の後、米国で次世代型の原子力発電所が建設される必要条件は次の3点に集約されるに至った」と指摘。まず第1に、電力需要が拡大し、新たな発電設備が必要になることだと指摘したのに続き、原子炉建設認可手続き上の不確定要素が少なくなること、新規原子力発電所建設の資本費削減を可能にするプログラムの存在を挙げた。

同副理事長はまた、最近の政府予測で、過去10年間の電力需要増加実績である年間2.2%よりもさらに低い1.8%を基本の増加率として試算しても2020年までに3億9,300万kW の新規発電設備が必要になるとの結果が出たことに言及。増加率が2.5%に上昇すれば追加電源の容量は5億6,400万kW にまで達するとの認識を示すとともに、電源の多様化を考慮すれば原子力は文句無しに2020年までの新規電源の中で実質的なシェアを占めることになると言明した。

同副理事長はさらに、「原子力は信頼出来る電力供給システムを保障する重要な存在であり、我々、産業界は新規原子力発電所の建設を決めるには磐石なビジネス基盤が必要であることも認識している」と指摘。この点がクリアされれば、産業界の努力は新規原子炉への投資が既存原子炉と同じように価値があると判断を下す際の、健全な根拠を提供することになるだろうと強調した。


Copyright (C) 2001 JAPAN ATOMIC INDUSTRIAL FORUM, INC. All rights Reserved.