[原子力産業新聞] 2001年2月22日 第2076号 <4面>

[NEI-insight] ユッカマウンテン処分場計画

大統領への「サイト勧告」目前に

米エネルギー省 (DOE) は現在、使用済み燃料の処分でネバダのサイトが適しているかという調査の中で重要なステップとなる、この場所をサイトとして勧告するかどうかの報告書公表に向けて努力を重ねている。この報告書では、処分場の特性と設計手続きが処分場の長期的な性能に及ぼす影響について検証することになっている。

地下処分場が何千年にもわたってどのような挙動を示すかということを評価するにあたって、DOE は処分場のトンネルヘの水の浸透や使用済み燃料容器の性能、放射性核種の移動を遅らせる地質構造などについて調査することになっている。DOE としては、報告書の公表によって、今年予定されている (ユッカマウンテンに処分場を建設するかどうかという) 大統領による決定に向けての重要なデッドラインをクリアーすることになる。大統領による決定は、ユッカマウンテン・プロジェクトを調査段階から許認可段階へと進めるにあたって議会から要求されている1つのステップである。

DOE の報告書は多方面にわたって検討されることになっており、その中には、DOE の作業を審査するために議会によって設立された独立した監督機関である核廃棄物技術検討委員会による検討も含まれている。

同委員会は DOE に対し、DOE の安全論拠には3つの重大な弱点があるとの見解を伝えている。最初の1つは結合反応と呼ばれているもので、使用済み燃料から発生する熱が処分場の岩盤に及ぼす影響である。同委員会の委員長を務めるジャレド・コーホンは、この分野の不確実性はきわめて高いと指摘している。同委員長は、DOE のモデルはこの面に関しては強固とは言えないとしながらも、DOE が現在すすめている実験はかなり有望であり、将来的には多くの知見が得られることになろうとの見解を示している。

コーホン委員長は2番目の問題点について、使用済み燃料の容器自身であると語っている。使用済み燃料を収納するために DOE が採用を考えている (容器の) 金属は C-22 合金と呼ばれるもので、きわめて厳しい環境下でもかなり長い期間にわたって耐えられるようなものである。しかし、同委員長は、その金属の性能においてかなりの不確実性があると指摘している。

コーホン氏は、DOE が仮にすばらしい処分場の設計を提案したら、こうした2つの重大な懸念に対処する上で役立つとの見解を示している。

原子力エネルギー協会 (NEI) の燃料供給・使用済み燃料管理担当理事を務めるスティーブン・クラフトは、「DOE はすばらしい処分場の設計を行っていると理解しており、我々としても DOE がサイトについての勧告報告を公表する際にもそうした努力の成果が実を結ぶものと期待している」と語っている。

核廃棄物技術検討委員会は、DOE による処分場の長期にわたった性能評価に不確実性があることにも懸念を示している、とコーホン氏は述べている。同氏は、「DOE としても、処分場が何千年間にわたってどのような挙動を示すかということを予測しなければならない。また、それには不確実性が避けられない。ユッカマウンテンに関して DOE がはっきりとした根拠を示し、関連した不確実性をどの程度明らかにすることができるかに応じて、まさにそのことを知る必要がある人たちの理解につながる」との考えを示している。

DOE は2つの方法で処分場の性能における不確実性に対処することにしている。まず、処分場の性能評価を裏付ける多方面の確証によって安全論拠を保守的にするということだ。さらに DOE は、2000年に公表した処分場安全戦略文書の中で、そうした安全論拠によって、特性を明らかにすることができる不確実性にも対処すると指摘している。DOE は科学アカデミーに対し、DOE の意思決定手続きがどのように段階的に行われるかについて注視するよう要請。DOE の民事用放射性廃棄物管理局長を務めるアイバン・イトキンは、DOE としてはこうした手順を踏むことによって、どの段階にあっても自らを方向転換できると語っている。カリフォルニアのパロアルタに本部のある米電力研究所 (EPRI) は独自に分析を行い、こうした DOE の戦略は実行可能であるとの結論を下している。EPRI のジョン・ケスラーは「DOE の活動について検討を加えたが、トンネル岩盤中の水文地質学的プロセスには全く影響を及ぼさないと考えられる」との見解を示している。

また同氏は、「不確実性があるため、DOE としての適切な戦略が、あらゆる可能性を考慮に入れたものになってもしかたない」と指摘している。このほど完了した EPRI の分析では、提案されている処分場の自然バリアの性能は、現在の DOE のモデルが示しているものよりかなり優れていると考えられるとの結論を導き出している。

不確実性の中心課題は、DOE が今行っているような調査の先例がないということである。コーホンは、「そうした長期間にわたってパフォーマンスを予測するようなことはこれまで行ったことがない」と語っている。同氏は、DOE は不確実性が定量化されているような他の複雑な問題の事例を探していると述べている。現時点でのそうした好例は地球規模での気候変動であり、きわめて不確かな問題について結論を導き出すような努力がなされている。安全論拠を裏付けるという努力目標の達成に向けての DOE のアプローチは、ユッカマウンテンでの作業を続けるかどうかという今年の決定に大きなウェイトを占めている。しかし、不確実性に対する情報をさらに探求することは、そこで終わりではないとみられている。NEI のクラフト氏は、「原子力産業界としての見方は、そうした不確実性に対する見通しが科学者の手で意思決定者に対して示されるにちがいないということである」と語っている。また、同氏は、「大統領が決定を下したあとで、原子力規制委員会 (NRC) が建設、操業、最終的な閉鎖という3つの許認可ステップを踏むということを議会が要求した意図もここにあった。産業界としては、こうした手続き全般にわたって核廃棄物技術検討委員会が引き続き DOE に対して疑問点を示すよう求める」と指摘している。


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