[原子力産業新聞] 2001年2月22日 第2076号 <6面>

[原研ほか] WSPEEDI利用し、ウンカの飛来を予測へ

日本原子力研究所と農林水産省農業研究センターはこのほど、イネウンカ類のアジア地域長距離移動の高精度予測で共同研究に着手することを明らかにした。

原研が開発した放射性物質の緊急時広域拡散予測システム WSPEEDI をイネウンカ類の飛来に適用して、定量的でリアルタイムにイネウンカ類の飛来を予測できるプロトタイプ・システムの開発を目指す。

水稲の代表的な害虫であるイネウンカ類は、主に梅雨の時期に中国大陸から下層ジェットと呼ばれる強風により運ばれて日本に飛来することが知られている。飛来時期、飛来地域の予測は現在、高度約1,500mの高層天気図を用いた風向風速解析により行われているが、海上など気象観測地点の希薄な地域の予測精度が低く、飛来源の詳細な推定には問題があるという。また近年、イネウンカ類の遺伝的形質等の解析が進むにつれ、これまで想定していなかった地域からの飛来を示唆する結果も得られていて、イネウンカ類の移動実態を高精度に推定することが被害対策上重要とされている。

最先端の計算科学の成果を取り入れて、定量的でリアルタイムな新しい予測手法を開発するため、原研では、WSPEEDI を基盤に放射性物質の大気拡散モデルをウンカ飛来に適用するための改良を加えるとともに、スーパーコンピュータを駆使して高速計算を実施する。一方、農業研究センターは、データ収集と解析、システムの汎用性を性能評価する。

3年後をめどにウンカの飛来時期、飛来ルートが予測できる新しい飛来予測システムのプロトタイプを完成させる計画だ。


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