[原子力産業新聞] 2001年3月1日 第2077号 <3面>

[スウェーデン] 国営電力、欧州での新規建設に楽観的

「今後20年に必要な電源」

スウェーデン原子力産業会議の会長で、国営電力のヴァッテンフォール社発電担当取締役でもあるN.アンダーション氏はこのほど、今後20年以内に欧州で新たな原子力発電所が建設される可能性を示唆した。

これは2月12日にブリュッセルで開かれたエネルギー円卓会議の席で述べられたもので、「原子力の利用が拡大する可能性は排除し難い」と断言した同氏は、欧州連合 (EU) が昨年11月にエネルギー安定供給に関するグリーン・ぺーパーで「新たに原子力設備が作られる可能性は少ない」と予測したのとは明確に見解が異なることを示した。同氏によれば、西欧で原子力設備の新設が停滞している理由は、(1) 当面新規電源設備がどうしても必要という状況にない (2) 新規電源が必要な国でも豊富で安価なガス火力への投資を決める傾向にある (3) TMI とチェルノブイリという2つの事故が未だにエネルギー政策に影響している−など。しかし原子力は経済性、安全性、信頼性、環境への影響のすべての点で利点があり、京都議定書の目標を達成するためにも今後少なくとも20年間は欧州のエネルギー・ミックスの中で必要な電源と考えられると強調した。

同氏はまた、グリーン・ぺーパーが原子力に関して誤解している部分の一つとして放射性廃棄物の問題に言及。「廃棄物は地球温暖化を防止する CDM の中から原子力を除外する時に引き合いに出される問題だが、家庭や企業から排出される廃棄物の膨大な量と比べたら原子力産業からの廃棄物など微々たる量」と述べ、途上国が持続可能なエネルギー戦略として原子力を選択する自由を奪ってはならないと訴えた。そして、この問題の解決において欠けているのは使用済み燃料と高レベル廃棄物の最終処分施設だけであり、その実現に必要な安全技術や財源がすでに確保されている以上、このほかに必要なのは政治的な後押しであるとの考えを強調した。

同氏はまた、欧州では今後20年間にべース・ロード電源が明らかに必要と判明された特定の地域では新規の電源が建設されると述べ、昨年11月にフィンランドで TVO が同国で5基目となる原子炉の建設原則決定を申請したことに言及。同社が「欧州のほかの地域で同様の申請が促されるためには、電力需要の増大とべースロード電源の必要性、老朽化した化石燃料発電設備のさらなる閉鎖、京都議定書の目標達成のためのクリーン・エネルギー開発の必要性−などが重要だ」と説明していたことを紹介した。

同氏としては、複数の選択肢の中から原子力が選択される条件として次のような点を挙げている。すなわち、 (1) より長期的な発想への転換=政府、産業界が電力の安定供給を最優先課題とすること (2) 電力輸入の回避=ある程度の電力自給は政府や産業レベルでも必要であり、エネルギーの自立は EC もグリーンペーパーのメイン・テーマとしている (3) 政治的関与=ここではエネルギーの自立やエネルギー・ミックスの多様化、温室効果ガスの削減に政府が係わっていくことを意味する (4) 許認可手続きの簡素化=原子力オプションを真剣に検討する企業が合理的なタイムテーブルの枠内で判断を下せるようにする (5) 大衆の支持=既存のサイトに増設が可能なら問題ではないが、そうでない場合は企業も政府も効果的なコミュニケーション・プログラムで地元の合意を取り付ける必要がある−などだ。

同氏はこのほか、最近の世論調査でドイツとスウェーデンの両国民は双方の政府が進めている脱原子力政策を支持していないという結果が出たことを指摘している。


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