[原子力産業新聞] 2001年3月1日 第2076号 <4面>

[原研・日本ガイシ] 中性子増倍材を量産

核融合炉むけ微小球

日本原子力研究所は2月23日、日本ガイシと共同研究で核融合炉用の燃料を効率的に生産するために必要な中性子増倍材の微小球を大量製造できる技術の開発に成功したことを明らかにした。

中性子増倍材はベリリウム金属から成り、核融合炉ブランケット内部で炉を運転しながら燃料となるトリチウムの生産に必要な中性子の数を増やす役割を果たす。核融合炉の運転で生じた1個の中性子を2個に増やすために用いられるが、中性子照射による体積膨張や熱応力を緩和させるために微小球形状であることが必要で、形状が直径0.2〜2ミリメートルのベリリウム微小球が最適とされている。

これまでの「マグネシウム還元法」や「ショットプロセス法」といった製造技術で作られたベリリウムは多量の不純物が混ざっていて、中性子照射した場合に体積膨張が大きいことや、大量製造に限界があるなどの問題が指摘されていた。

原研は1992年度から日本ガイシと共同で、ベリリウム製金属棒を電気アークの熱で溶かしながら回転させ表面張力を利用して微小球を製造する「回転電極法」を用いた製造技術の開発と微小球の照射特性評価を実施。その結果、不純物の発生を抑えたベリリウムの微小球を大量に製造することに成功した。また、同法により作られた微小球を米国の試験炉を利用し国際熱核融合実験炉 (ITER) で10年間運転したことに相当する条件下で中性子照射した結果、体積膨張率が約1%と小さいことが確認できたという。

今回の製造技術の開発により、ITER 建設の目的のひとつであるテストモジュール照射試験で用いる中性子増倍材として、所要量約1トンのベリリウム微小球を供給することに見通しが得られたとしている。開発されたベリリウム微小球は、99年に開かれたベリリウム専門家会議の場で、回転電極法で製造したベリリウム微小球が国際協力により行われる欧州試験炉 (HFR) での長期間照射試験用試料として唯一選ばれた。

今後、べりリウム微小球が世界的な標準材料になるとともに、より厳しい照射条件下で使用される核融合原型炉ブランケット用中性子増倍材の開発に道を拓くものと期待されている。


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