[原子力産業新聞] 2001年3月8日 第2078号 <1面>

[総合エネ調] 長期エネルギー需給見通し「目標ケース」策定にむけ議論

複数のシナリオ検討

総合資源エネルギー調査会の総合部会 (部会長・茅陽一東大名誉教授) と需給部会 (部会長・黒田昌裕慶応大教授) の合同会議が6日開かれ、長期エネルギー需給見通しの検討にあたっての「基準ケース」を了承した。従来掲げられている政策や電力供給計画が実現したという前提で2010年度時点の需給を見通したもので、コスト的に優位な石炭火力にウエイトがかかる分、炭酸ガス排出目標を7%超過する結果が導き出された。今後はこれを踏まえて、環境目標を達成するなどの政策対応を検討し「目標ケース」の検討を進める。そのため、まず複数のシナリオを描き、国民からの意見を聞いた上で最終的な総合エネルギー政策パッケージとしての「目標ケース」を策定する。

この日の合同会議では、「基準ケース」の説明を受けた後、委員の間で意見が交わされた。基準ケースでは、原子力の増設に関して、従来の政策目標から下方修正し、現行の供給計画に示されている13基という数字を採用している。いわば原子力立地の長期化で原子力発電のウエイトが下方修正された分が石炭火力で補われるという見通しであり、その分、環境目標値の達成を難しくするという構図が浮き彫りとなっている。この原子力問題については「原子力の稼働率を上げるというオプションを検討すべき」など、安全性を前提として稼働率の向上で発電電力を増加させる選択肢を検討すべきとの意見が出された。一方で、「現場のことを考えれば、稼働率の向上をメッセージとして発するのはプレッシャーになる」などの意見もみられた。また「脱原子力を前提とした議論を」との意見の一方、「自由化やセキュリティー、環境問題の整合性ある現実的な解は原子力しかない」など現実的な対応には原子力が不可欠とする意見が出された。

なお、原子力発電が今後増設されないとどのような影響が出るのかを明確にするべきとの意見が、これまでの検討や、原子力政策円卓会議などから出ており、このいわゆる原子力のモラトリアムシナリオ検討について、茅陽一総合部会長は「今後、総合部会の下に懇談会を設けて検討する」方針を示し、別途検討することを明らかにした。このシナリオ検討を含めて、「目標ケース」検討にあたっては原子力などの電源構成の問題、省エネルギーや新エネルギーの位置付けを見極めていくことになる。なお、環境問題のうち、京都メカニズムで示された炭酸ガス排出権取り引きの問題については産業構造審議会で審議される。


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