[原子力産業新聞] 2001年3月15日 第2079号 <1面>

[ITER] 国内誘致の意義強調

報告書骨子案を了承

原子力委員会の ITER 計画懇談会 (座長・吉川弘之日本学術会議会長) は14日、我が国への国際熱核融合実験炉 (ITER) 誘致の是非をめぐる報告書取りまとめに向けた骨子案を審議した。会合は同懇談会が昨年12月25日に確認した国内誘致の意義を再度認める形で議論し、基本的に国内誘致を促す方向で骨子案を了承。今月内をめどに最終報告書案を検討したうえで、原子力委員会に提出する。


最終報告書作成に向けた骨子案はその中で、「エネルギー問題は地球環境問題と同じく、人類が強調して解決すべき課題だ」として、解決策を見い出すうえで科学技術が果たす役割を評価。エネルギー不足の問題が現実的な脅威として現れていないとしても、問題解決への努力を始めるのは早いほど良いとの認識を示した。

核融合が人類へのエネルギー供給源として果たす役割については、実用化が遠い将来であることや現時点ではその技術的実現性が実証されていないことを挙げながらも、「他の代替エネルギーと同列に論じることは適当ではないと」したうえで、核融合は人類にとって無視できない有力な選択肢であり、技術的可能性の研究開発推進には十分な意義があると強調した。

核融合エネルギーの技術的な見通しでは、「核融合炉実現のための自己点火条件の達成や長時間燃焼の実現が十分に見通せる状況」だとするとともに、とくに ITER の設計がコンパクト化されて建設見積もりが5,000億円程度となっている点を強調した。しかし、「ITER による研究開発が順調に進展した場合、原型炉の建設が2030年頃に可能になると見られる」とした点については、明確な時間的表現を記述することに委員からは疑問が投げかけられた。

また、我が国として ITER 計画に参画することの意義を国際的役割の視点で捉え、「我が国も世界的な研究のインフラとなる施設を持ち、世界の研究者に公開して我が国の存在意義を高めつつ相互依存の関係を維持すべき」とした。これに対しては、ITER 誘致が日本の国益に適うことを前面に出して広く理解を求めることが必要だとの意見が出された。

骨子は我が国の科学技術的潜在力について、「大学を含め広く行われている核融合研究は ITER 計画を支える基礎となる十分なポテンシャルを持つ」としたほか、核融合研究では ITER とともに、関連する炉工学やプラズマ物理学が平行的に研究されるべきとの内容も盛り込んだ。

ITER に対する国の資源配分の点からは、誘致した場合、建設費の多くを負担することになったとしても、未来の人類のための保険料との意味で価値と義務がある投資だとの考えを盛り込んだ一方、技術目標や開発リスクとコストのバランスを取り、計画の費用を最小化することは重要だと指摘している。

こうした認識に立ち、結論では、今後政府が国内候補地の適地の有無や財源確保をさらに検討した上で総合的判断を下すよう求め、研究者の参加・協力体制の確立や確保の法整備で論議を尽くすことが重要だとした。

さらに、ITER 設置国となる場合には責任を全うする強い意志の継続が必要としたほか、資源の確保につて科学技術全般における核融合の発展が重要だとし、効果的な資源配分への考慮も求めた。


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