[原子力産業新聞] 2001年3月15日 第2079号 <1面>

[幌延深地層研] 調査研究計画を地元説明

地域との共生めざす

核燃料サイクル開発機構と幌延町は10日と11日、幌延町などの住民に対し同町で計画されている深地層研究所 (仮称) に関する説明会を実施した。地元を始め周辺市町村からの参加者に対し、サイクル機構から今後実施する調査研究計画についての説明や質疑応答が行われた。

10日午後に幌延町公民館で開かれた説明会には、町から寺田保徳助役、山本時夫振興課長のほか、サイクル機構から圓山全勝総務・立地部長、河田東海夫バックエンド推進部長らが出席。昨年11月16日に締結された「幌延町における深地層の研究に関する協定書」に基づき、「地表から行う調査研究 (第1段階) 計画」と「平成12年度調査研究計画」について詳細に説明するとともに住民の理解促進をはかる目的で行われた。

寺田助役が「研究所計画には過去にいろいろな経緯があったが、サイクル機構には一層の理解活動に努めてもらい、研究所が地域に貢献することを期待する」と挨拶したのに続き、サイクル機構の圓山総務部長は「研究所が最終処分場になるのではないかとの懸念に対しては二重三重の担保措置がとられているので安心してほしい」としたうえで、研究所が幌延町に来てよかったと思われるように誠心誠意努力したいと語った。

同機構が幌延町で予定している深地層研究所計画は、開始から終了までを約20年間として、(1) 地表から行う調査研究 (2) 坑道を掘削しながら行う調査研究 (3) 坑道を利用して行う調査研究」−の3段階に分けて行われる。

地表から行う調査研究の第1段階は、2000年度末から2005年度までの約6年間。最初の約1年間は、2〜3平方kmの深地層研究所設置地区を選定し、その後選定地区と数〜十数平方kmの周辺地区で調査研究を行うとしている。地表調査で得られる地質構造や地下水の流れ、水圧分布データなどに基づき、研究所設置地区での地下施設の位置やレイアウトなどを具体的に検討する考えだ。

また、今年度内に着手する調査研究では、空中や地上からの物理探査、試錐調査などで地層や断層分布、地下水の流れ方や水質、地層の強度などのデータを集めるとともに、地下施設建設による地下水の流れや水圧の分布・水質などの変化を予測する。このほか、地下水の利用状況、希少動植物についての聞き取り調査も行うことにしている。

こうした作業に向け、サイクル機構では来月の再開予定に合わせ幌延事務所の補修を実施中であることを紹介。現在仮称のままとなっている研究所の名称も、今後地元の意見を反映した名前に変えていきたいとの考えを示した。

説明の後、参加した住民などから質問が出され、住民が高レベル廃棄物処分のための研究を放射性物質を使わないで実施するとは考えられないと質したのに対し、サイクル機構からは「放射性物質を使っての研究は東海の地層処分放射化学研究施設を利用している」として、幌延町には放射性物質を持ち込む必要がないとあらためて説明した。

また、周辺市町村からの参加者は「地元の合意」について取りあげ、合意は幌延町だけでなく、あくまでも周辺自治体の同意がなければ成り立たないと主張。これに対しサイクル機構は、周辺自治体に不安や懸念があることは承知しているとしたうえで、理解を得られるよう一層努めていきたいと答えた。


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