[原子力産業新聞] 2001年3月22日 第2080号 <1面>

[FNCA] 実効的プロジェクト推進で合意

高まる各国の参加意識

原子力委員会が進める「アジア原子力協力フォーラム (FNCA)」の第2回コーディネーター会合が14日〜16日の日程で、東京・港区のグランドホテルで開催された。会議では、参加国から医学、農業分野などで具体的プロジェクトの提案が相次ぎ、今後詳細な検討を進めることで合意した。あわせて、活動の将来の方向性や国際原子力機関 (IAEA) の協力活動との調整をどう図るか等が確認された。


「アジア原子力協力フォーラム」は、原子力委員会が提唱し進めてきた近隣アジア地域の原子力協力の枠組みを強化し、実効ある協力を目指して99年に新体制として発足。参加9カ国から各1名のコーディネーターを選び、毎年協力活動成果のレビュー、活動計画の見直し、新規プロジェクト導入などを横断的に審議し、調整を図っている。

14日からの会合では、昨年11月にタイで開催された各国大臣級の「第1回フォーラム」本会合の結果を受け、「目に見える社会・経済インパクトが期待できる」実効的なプロジェクトを2001年度以降の活動にどう盛り込むかで参加者が議論を重ねた。

日本を始め、中国、インドネシアなど5カ国が従来の研究炉利用、農業利用、医学利用など7分野で新規13件を含む17件のプロジェクトを提案。新規提案プロジェクトで主なものは (1) テクネチウム・ジェネレーターの製造技術の確立 (2) 植物の突然変異育種 (3) バイオ肥料の開発普及 (4) 使用済線源管理システム整備への支援 (5) アジア原子力科学技術大学構想−など。

テクネチウム・ジェネレーターの製造技術プロジェクトは、日本原子力研究所が開発した技術をベースに、核医学診断に広く利用されるアイソトープであるテクネチウム99mの製造技術を域内に確立させようというもの。この方法によると、濃縮ウランを使用せず、廃棄物も出ないといった利点がある。

使用済み線源の管理強化支援では、タイトフィリピンをモデル国として、日本などが中心となり適切な処理・管理法の検討調整や協力計画策定を行い、2年間で管理システム整備のための報告書をまとめる予定だ。これは、昨年タイとフィリピンで使用済み線源による被曝事故が起こったことがきっかけとなった。

また、原子力利用の発展のためには、推進・規制両面での人材養成が重要との観点から、インドネシアがアジア原子力科学技術大学構想を提案。地域に既存の教育施設のネットワーク化を含め、可能性を検討することにした。

このほか新たに、「電子線加速器利用」「生態系改善」「持続的開発と原子力」−の3分野を強力活動に組み込むよう提案され、さらに検討が加えられることになっている。

2年前のフォーラム体制再構築を踏まえ、「各国がパートナーシップを認識しているのが実感できた」(町末男コーディネーター) との言葉が示すように、今回の会合では参加各国の意識の高まりが見られた。一方、IAEA による RCA 地域協力活動との重複を避ける必要性が指摘され、中央省庁再編を機に一層日本のフォーラム活動への貢献を求める声も強かった。


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