[原子力産業新聞] 2001年3月22日 第2080号 <1面>

[総合エネ調] 原子力部会、原子力の技術基盤確保でとりまとめ

官民の役割を明確化

総合資源エネルギー調査会の原子力部会が15日開かれ、原子力の技術基盤確保についてのとりまとめ案を審議した。長期エネルギー需給見通しの策定にむけ、原子力分野の技術基盤を確保するために必要な対策を検討しているもの。とりまとめ案では、国が中心となって取り組む技術開発分野として、規制高度化などをにらんだ試験研究の促進が必要としているほか、将来の不確実性を最小限に抑え、民間や市場の原理だけに任せきれない MOX 再処理技術の開発、高レベル廃棄物関連の技術開発を国が主体となって進めるべきとの考え方を示した。またエネルギーの長期的な安定供給や環境問題に対応した技術選択肢を広げるうえで、高速増殖炉などの技術開発は官民が共同で実施していく必要性を述べるとともに、研究の進め方に競争的な環境と適切な評価を取り入れることや国際的な共同研究を進めていくべきとの考え方が盛り込まれた。

こうした一連の技術開発を中長期的に進めるうえでの環境整備としては、研究計画を明示し規制当局など行政との連携をはかり、エネルギー政策上の位置付けを明確としながら進めることや、研究開発の成果が民間に円滑に技術移転されるよう産業界などの知見を結集していくことを求めている。また安定的で計画的な研究のための環境整備に際して、将来的な見通しにたった環境整備を国が責任をもって進めることを明記し、研究施設の廃止措置関連予算の手当てや、研究に伴い生じる放射性廃棄物の処理処分にも適切な対策が必要としている。

人材確保の面からは、新規の発電所建設減少などで規模の縮小がみられているとの現状認識にたち、JCO 事故の教訓も踏まえた倫理上の資質などを養う意味からも、国の研究機関、大学などの教育機関、関係研究機関に所要の人材を確保するための措置をとる必要があるとしている。

民間が主体的な役割を果たすべき分野としては、発電所等で着実な保守作業が実施される体制の整備などをあげ、現場での意思疎通をはかることや、職責とやりがいを実感できる表彰制度の導入などを積極的に行うべきとしている。また万一の事故発生時やトラブルに際して事業者内にとどまらない知見を結集できるよう事業者間やプラント設計者間のネットワーク形成に期待を示している。

同とりまとめ案について、各委員からは「原子力の、基幹電源としての位置付けを明確に打ち出すべきではないか」として同部会としての検討の位置付けをより明確に打ち出すべきとの意見のほか、「原子力産業が魅力的な産業であるべきだが、将来性や成長性の面でかならずしも明るい方向性にはない。やはり新規の建設を進めることが大切だ」など、立地促進が重要な観点との意見がみられた。また自由化の問題や、厳しい経済状況を踏まえた予算確保の問題などをめぐって意見が交わされた。

原子力部会は、次回会合で各委員からの意見を入れて最終案を打ち出す方針だ。


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