[原子力産業新聞] 2001年3月22日 第2080号 <2面>

[原産] 放射光利用めぐり研究会開催

放射光利用の知識を普及

日本原子力産業会議は15日、青森市のホテル青森で、「むつ小川原地域における放射光施設整備研究会」を開催した。この研究会は、むつ小川原地域へ放射光施設を建設・整備することに向けて、放射光に関わる知識の啓蒙啓発と、放射光施設の利用者となる研究者の「掘り起こし」および組織化・ネットワーク化を図ることを目的に開かれたもので、当日の会場には約100名の参加者がつめかけ、熱心に聞き入っていた。

会の冒頭、挨拶に立った「むつ小川原地域における放射光施設整備検討委員会」の大桃洋一郎委員長は、放射光施設建設に向けた基礎調査など、これまでの経緯を説明した後、(1) 東北・北海道地域における放射光研究開発・交流の拠点として整備 (2) 産・学・官の連携のもと、地域の研究開発の充実・発展を目指す (3) 生命科学、理・工学などに係わる基礎および応用研究に取り組む−ことなどを、放射光施設の基本コンセプトとして掲げ、最大加速エネルギー2GeV 程度、放射光リング周長約100m、建屋の大きさは50m×50m程度の規模の施設を建設する予定であることを表明した。また同氏は、「むつ小川原地域の有効な利用は、国にとっても重要な問題だ」とした上で、放射光施設の建設が「地域のより一層の発展に貢献できれば」と述べ、地域と共生していく施設となることを目指している事を強調した。

続いて、兵庫県先端科学支援センターの千川純一氏が、「放射光利用の展望−世界の潮流から」と題する特別講演を実施。「放射光はなぜ明るいか」などといった原理的な説明や、蛋白分子の原子配列の解明、X線顕微鏡、ガンの検診・治療など、「何が出来るのか」についての説明を、多彩な実例を挙げるなどして解説し、その必要性・有効性を述べた。

引き続き行われた講演は次の通り。

▽「ヒトゲノム解析とタンパク質構造ゲノミクス」八尾徹理化学研究所ゲノム科学総合研究センターコンサルタント ▽「放射光を利用したX線顕微鏡による生体の微細構造観察」伊藤敦東海大工学部助教授 ▽「放射光X線分光顕微鏡による微量元素分析」早川慎二郎広島大工学部助教授。

なお同研究会は、翌16日にも舞台を八戸市に移し、実施された。


Copyright (C) 2001 JAPAN ATOMIC INDUSTRIAL FORUM, INC. All rights Reserved.