[原子力産業新聞] 2001年3月29日 第2081号 <2面>

[原子力学会] 春の年会開かれる

ITER誘致、「総合科技会議が判断」

日本原子力学会の春の年会が27日、東京・世田谷の武蔵工業大学で開幕した。29日までの期間中、核燃料サイクルや原子力発電技術などの専門的研究や技術開発から倫理など社会科学的な研究まで幅広い分野で700を超える報告が行われる。

初日には省庁再編にともない再編された原子力行政の今後がとりあげられ、文部科学省、経済産業省、内閣府から、それぞれ21世紀を迎えた今後の原子力政策をめぐって特別講演が行われた。

そのうち、文部科学省からは、結城章夫大臣官房長が講演。原子力を含めた科学技術、また教育など学術を融合した総合的な取り組みを強化していく方針を述べた。結城官房長は、文部省と科学技術庁の統合について「ある意味で多様性を得たと思っている」とし、「環境の変化に柔軟に対応するために多様性は力になる」と強調した。そのうえで、理科教育や地域における教育などを含めて総合的な政策の推進に取り組んでいく姿勢を示した。

また経済産業省のもとに発足した原子力安全・保安院の佐々木宣彦院長は、規制の高度化など諸課題に対応するための組織強化などを進めるとの考えを示し、国際的な共同研究や規制、検査への対応にも力を注ぐ必要があると述べた。とくに高経年化への対応として中性子照射データの蓄積が重要とするとともに、議論の出ている原子力発電の運転期間の見直しについても「きちんと議論して早めに決めていくべき」と述べ、迅速に課題に対応していく姿勢を示した。

内閣府からは興直孝政策統括官が講演し、閣僚などで構成される総合科学技術会議の役割などを述べた。同氏は、21世紀の総合科学技術政策見直しを行ってきた総合科学技術会議の検討がまとまったことから、その科学技術基本計画について「30日にも閣議決定をいただくよう準備を進めている」とした。総合科学技術会議について同氏は、資金面まで責任をもって予算確保等にあたると同時に適切な評価を行って重要な施策を判断する立場にあるとした。そのうえで、ITER (国際熱核融合実験炉) の誘致問題についても「現在原子力委員会でとりまとめにあたられている。誘致に関する最終的な資金規模やわが国の科学技術開発に与えるインパクトをどう考えるか、総合科学技術会議が判断する」とし、今年7月をめどに原子力委員会、総合科学技術会議がそれぞれ適切な時期に判断を下すことになるとの考えを示した。


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