[原子力産業新聞] 2001年3月29日 第2081号 <2面>

[総合科学技術会議] 科学技術総合戦略に24兆円の研究開発費盛り込む

第2期科学技術基本計画を閣議決定へ

内閣府の総合科学技術会議は22日に開かれた会合で、今後5年間で政府が研究開発に24兆円を充てることなどを内容とする「科学技術総合戦略」を、森喜朗総理大臣に答申した。同戦略は30日にも第2期科学技術基本計画として閣議決定される。

中央省庁再編前の昨年末、当時の科学技術会議が今後5年間の科学技術政策に関わる基本計画案をとりまとめている。今回の答申は、科学技術会議を引き継いだ総合科学技術会議がこの計画案に独自の視点を盛り込んだもの。人間・社会の関係や正と負の両面から科学技術を総合的に捉え、自然科学と人文社会科学の総合化の観点や、社会との関わりで科学技術のあるべき姿などの基本理念を冠した。

重点的な資源配分により研究開発投資の効果をあげることや世界的レベルの成果を創出するための仕組みづくり、成果を社会へ還元することなどを、科学技術振興のための基本方針として掲げるとともに、2001年度から05年度までの政府の研究開発投資総額が24兆円必要だとしたうえで、投資の重点化・効率・透明性確保をはかりながら効果的・効率的な資源配分を行う点を強調した。

重要政策については、「未来を切り拓くような質の高い基礎研究」に力点を置くとともに、ライフサイエンス、情報通信、環境、ナノテクノロジー・材料−の分野に重点的に資源を配分し、研究を促進させることを示した。このほか、エネルギー、製造技術など国にとり基盤的な分野も重視して推進するとしている。さらに、将来の成長が予想される研究領域が出現した場合にも機動的に対応することを盛り込んだ。

優れた成果を生み出し活用していくために、研究開発システムや産学官連携の仕組みを改革することを提示。科学技術の社会的位置づけを考える中で、研究者・技術者に対し高い倫理感と社会的責任を強く求め、技術者の資格認定に倫理的な要素も重要だと指摘している。科学技術の事故やトラブル等のリスク評価を行い、リスク最小化に向けた管理も重要だとした。

こうした考え方に基づき、総合科学技術会議は今後自らが果たすべき使命を明らかにしている。

策定される科学技術基本計画が着実に遂行されるよう、重点分野の研究開発に推進戦略を立てるとともに、次年度の重要施策、資源配分の考え方を示していく考えだ。これらを踏まえて、あるべき資源配分の実現のために、財務省などと十分な連携を図っていく姿勢も示している。

また、「府省の枠を越えた国家的な重要プロジェクトについては、効果的な実施を求めて意見を提示する」との考えに基づき、プロジェクトの実施中においても必要な評価を行うなどとしている。大規模研究開発に対し評価を加えるほか、関係省庁の施策も評価していく方針も示した。


総合科学技術会議は、総理大臣のもと内閣府が主導する科学技術政策の「司令塔」として、整合性の取れた我が国の科学技術戦略を打ち立てる役割を担っている。とともに、戦略に沿って各省の施策をチェックする任務も有しているわけで、当然政府の予算配分に対しても厳しい目を光らせることになるだろう。そのために、推進すベき重点分野を見定める専門委員会の設置も決まった。

このような中で、5,000億円規模の大型科学技術プロジェクトである国際熱核融合実験炉 (ITER) 計画についても、総合科学技術会議が全体的視野に立ち、我が国としてのプロジェクトヘの貢献をどう位置付けるかが気になるところだ。

ITER 計画懇談会での議論を踏まえて、5月には原子力委員会が国内への誘致に対する方針を決定する見通しだが、総合科学技術会議には同委員会との十分な連携を図りながら、科学技術創造立国を目指す我が国にとってこの国際共同プロジェクトが持つ意義を深く認識し、相応わしい判断を示してもらいたい。


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