[原子力産業新聞] 2001年4月5日 第2082号 <1面>

[ITER] ITER墾、誘致にむけ結論示す

世界の核融合を先導

原子力委員会 ITER 計画懇談会 (座長・吉川弘之日本学術会議会長) は3月30日の会合で、国際熱核融合実験炉 (ITER) の我が国への誘致に関する最終報告案をめぐって意見を交わした。誘致への判断を促す明快な結論を示せるかどうかが焦点となっていたが、結局、ITER 誘致を行うことは意義が大きいことを結論したとの表現を盛り込むことで了承した。

報告書案はこれまでの審議を基に、地球環境やエネルギー問題と科学技術の位置づけ、核融合エネルギーの技術的見通しなどを概説しながら、我が国としての ITER 計画の進め方や計画具体化にあたっての留意事項を記述。ITER 計画を進めることについて、国際貢献の観点から世界の研究者に公開していくことの意義や、世界で唯一の ITER を主導的に建設することで我が国の核融合分野でのポテンシャルの高さを長期間維持することが可能になる−などといった評価を与えた。同計画を進めるうえで留意すべき点としては、技術目標や開発リスクとコストのバランスのほか、安全性を含め国民に十分な情報提供を行うことの必要性を指摘した。

核融合の実用化に向けて進められている研究開発とプラズマ制御技術の確立の関係を述べた箇所では、委員の間で意見の違いが目立った。「多様かつ多くの研究開発が進められてきた結果、今後取り組むべき重要課題は、核融合反応により燃焼するプラズマを制御する技術の確立することにある」とする原案に異論が出され、そのほかの閉じ込め技術や材料の開発も重要な核融合研究の柱だとの主張を考慮した結果、「多様な核融合研究開発の中で重要課題として、プラズマ制御技術の確立のため、ITER 建設が計画されている」と修正することで歩み寄りが見られた。

さらに、国内候補地の選定は懇談会の役割でないとしながらも、ITER 誘致は自治体にとって重要な意味を持つとの観点から、候補地の選定に際しては地元の理解が特に重要であるとしたうえで、「選定に関する公正かつ速やかな立候補地選定のための作業を直ちに開始する」ことの必要性を盛り込んだ。

原案では結言で、「設置国になることの意義が大きいことを理解した」との表現に留めていたが、より明確な文言が重要との意見が多く出されたことから、一歩進めて「意義が大きいと結論した」と改めることで合意を見た。同懇談会に与えられた任務と責任の範囲の中で、各様の核融合研究者や関係者に配慮しつつ、国家的大型プロジェクトの方向づけを行う困難差を示した結論だったと言えよう。

この後、来月2日まで報告書案に対して意見募集が行われ、同懇談会が適宜修正を加えるなどした最終報告書案を、5月中頃には原子力委員会に提出する見通しだ。


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