[原子力産業新聞] 2001年4月5日 第2082号 <3面>

[米国] エネ省、世界のエネ消費量を予測

原子力、途上国で拡大

米国エネルギー省 (DOE) のエネルギー情報局 (EIA) は3月28日、2020年までの世界のエネルギー消費を試算した「国際エネルギー予測 (IEO) 2001」を発表し、原子力については途上国を中心に発電シェアが増大するとしたほか、新規炉の建設と既存発電所の運転認可延長によって実質的な設備容量は拡大するとの見方を示した。

EIA によれば、今後20年間に世界のエネルギー消費量は59%増加すると考えられるが、このうち半分は強力な経済成長によって急速なエネルギー需要増が見込まれる中国やインド、韓国などアジア諸国および中央、南アメリカといった途上国での消費。このような中期的予想の背景として EIA は、2000年に見られた現象の中でも特に、アジア地域で予想された経済復興や旧ソ連諸国での2年連続の急激な経済成長を上回る強さで石油価格の高値が続いたことを挙げた。バレルあたり1日で最大37ドルにまで石油価格が高騰したのには石油輸出国機構 (OPEC) その他の産油国における生産量の減少に理由があると EIA は指摘。経済が回復したアジア地域での石油の需要量は不況期 (97〜99年) を脱した後の予測をはるかに上回り、IEO 2001年版の基本シナリオでは2003年までの石油価格はバレルあたり25ドルから28ドルレベルに留まると予測されている。

原子力による発電電力の消費量を世界全体でみると、99年に2兆3,960億kW 時だったのが2015年には2兆6,360億kW 時まで増加。その後は減少していき、2020年時点で2兆5,820億kW 時になると EIA は予想している。原子力設備の増加分は途上国を中心に、それも99年から2020年に原子力による電力の消費が年に4.9%増えると見積もられるアジア地域に設置されると基本シナリオは指摘。99年時点で8%ほどだった途上国の原子力設備のシェアは中国や韓国、インドにおける設備拡大により2020年には19%と倍以上の伸びを示すとの認識を明らかにした。

しかしその一方で、先進諸国では東欧、旧ソ連諸国を中心にいくつかの老朽化した原子炉が寿命を迎えるとしており、新たな原子炉によるリプレース計画はフランスと日本でわずかな例外が予想される以外はほとんどないとの見方を示している。こうした予想の背景として EIA は、2000年にドイツやスウェーデンなどの欧州諸国で脱原子力が加速されたことを挙げているが、現実的にはスウェーデンでバーセベック2号機の閉鎖を延期したように、原子力に代わり得る電源の確保が予想以上に難しいことを多くの国が認識するかもしれないと指摘した。また、米国では昨年、国内の商業炉に初めて運転認可の20年延長が承認されたほか、平均の運転実績が向上、国外企業による原子炉の買収も相次いだ点を挙げ、同国における原子力発電の将来像が改善されつつあることを示唆。EIA はさらに、世界全体でも平均時間稼働率が90年の72%から98年には79%に上昇したことを強調している。


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