[原子力産業新聞] 2001年4月12日 第2083号 <1面>

[原子力安全委員会] 防災対策専門部会、緊急時被ばく医療のあり方・防災指針への反映を審議

「命の視点」を重視

原子力安全委員会の原子力発電所等周辺防災対策専門部会が11日に開かれ、原子力災害における緊急被ばく医療のあり方に関する検討案、および防災指針への反映などについて審議した。緊急被ばく医療に関しては一昨年発生した JCO 東海事業所での臨界事故を教訓に実効性ある医療体制と国や地方自治体、事業者などの責任を明確にした。初期、二次、三次という段階的医療のネットワーク構築をはじめ、内部被ばく低減のための薬剤配布など医療介入の考え方を導入するなど、「命の視点」に基づく医療のあり方をとりまとめた。

検討は同専門部会にワーキンググループを作って進められ、原子力施設等での災害の発生にともなう医療体制の整備や、災害のみならず放射線の関与する人身事故をも含めて初動の医療対応マニュアルの具体化など実効性ある医療のあり方を重視して検討されてきた。

検討案では、原子力施設近隣の医療機関が行う初期医療から重症患者の専門的医療まで、初期、二次、三次という段階的な医療のあり方を具体的に示しており、放射線医学総合研究所を中心として、立地地域の近くにある病院を地域の防災計画のなかで指定して初期被ばく医療機関では簡単な除染や応急措置を可能とするなど、全国規模での医療ネットワーク構築を求めている点がポイント。

そのための関連情報データベースの整備や必要な資機材の調達、患者搬送の経路確保と関連の情報連絡体制、また人材の養成などのあり方もあわせて示して、全国規模の医療ネットワーク形成への具体的な処方箋が示されている。

また同検討案にもとづく防災指針案について検討が行われ、各委員からはこれらの案について、実効性ある体制をつくるうえでの指揮系統の明示や、残された課題である住民の健康不安に対する対策の必要性などが指摘された。このほか各委員からの意見を入れたうえで各案は原子力安全委員会に報告される。

なお、今月20日に退任する青木芳朗安全委員長代理が部会の最後にあいさつし、「リーダーシップと責任をもってやってもらいたい」と原子力安全委員会の役割に期待を示すとともに、緊急被ばく医療のあり方を含め、医療に関する常設委員会を設け、今後もチェック・アンド・レビュー機能を果たす必要がある点を指摘した。


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