[原子力産業新聞] 2001年4月12日 第2083号 <4面>

[原研] ダイヤ使い高性能検出器

ITER むけに住友電工と協力して開発

日本原子力研究所はこのほど、住友電気工業の協力により人工のダイヤモンドを利用した放射線検出器を開発することに成功、実用化への見通しが得られたことを明らかにした。高温や高放射線の環境でも作動できるほか、腐食にも強いといった特長があることから、原子炉や宇宙環境などの厳しい環境条件下でも利用可能だという。

原研は国際熱核融合実験炉 (ITER) でのアルファ線と中性子線の計測を可能にする放射線検出器の開発に取り組んできた。従来、シリコンなどを用いた半導体検出器が放射線計測に使われてきたが、核融合炉などの高温、高放射線環境の中では正常に機能しないなどの問題があるため、原研ではダイヤモンドを用いた検出器の開発に着目していた。

開発を進める中で、天然ダイヤモンドや高圧高温で合成した人工ダイヤモンドには不純物が混ざっていることが影響したため、不純物を低減しやすい化学気相合成 (CVD) 法による人工ダイヤモンドの使用に切り換えたが、ダイヤモンドが多結晶体だったことから十分な放射線検出性能が得られなかったという。

今回、CVD ダイヤモンドの単結晶化に向けて蓄積してきた原研の研究データを基に、住友電気工業が単結晶 CVD ダイヤモンドの合成に成功。両者の協力で、放射線検出器としての機能を確認することができたとしている。

検出器を使ってプラズマから発生する中性子と人工ダイヤモンド中の炭素との核反応で発生するアルファ線を測定することで中性子を検出する。こうした原理を利用して核融合炉内での自己点火条件や燃焼状態の確認が可能になることから、将来 ITER での研究にも貢献するものと期待される。


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