[原子力産業新聞] 2001年4月12日 第2083号 <4面>

[住友特殊金属] 4.4テスラの高磁場を永久磁石の加速器で達成

住友特殊金属は3日、文部科学省放射線医学総合研究所と共同で、永久磁石式加速器実験モデルで4.4テスラの高磁場を達成したと発表した。

加速器は電磁石が用いられているが、交流電磁石では通常1.5テスラ前後で使用されており、直流電磁石でも高磁場を発生させたものはなく、これまで小型化を行うことは困難だった。一方、永久磁石を用いた加速器は米国フェルミ加速器研究所で反陽子の蓄積リングが稼働しているが、磁場強度は、今回、住友特殊金属と放医研のグループが開発したものの10分の1以下しかない。放医研では大型加速器「HIMAC」を用いて、重粒子ビームによるがん治療試験を行っており、既に800人以上のがん患者で有効な実績をあげている。この成果を受けて兵庫県などでも専用の重粒子線治療加速器等の装置が稼働される予定になっているが、全国的に広く普及を図るためには、大幅な小型化が求められている。

この永久磁石装置は、同社の NEOMAX (希土類永久磁石) を使用した主さ約60kg、直径24cmの磁気回路で、空間中に4.4テスラを発生させることができる。今回、磁気回路を工夫することで、従来、超伝導電磁石でしか得られなかった強磁場を永久磁石で達成させた。

今回の永久磁石式加速器実験モデルの成功は、普及型医療用加速器の開発に弾みがつくと期待されており、同グループでは数年後の実用化を目指して磁場分布、均一性、安全性等の研究開発を継続する予定。これらの目標が実現すると、磁場の発生に電源を必要としないため、省エネルギー、省スペースのがん治療用加速器の普及へ道が開けるという。


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