[原子力産業新聞] 2001年4月26日 第2085号 <3面>

[台湾] 馬鞍山原発電源喪失事故で報告

「塩害による供給不具合」

台湾の原子力規制当局である原子能委員会 (AEC) は18日、馬鞍山原子力発電所1号機 (95万1,000kW、PWR) で3月18日に起きた外部電源喪失事故に関する調査報告書を公表した。事故の原因について報告書は、送電線の機器に付着した塩の結晶体が所内への送電を不安定にするとともに、1つあった非常用ディーゼル電源がすぐに起動せず電気系統火災を誘発。これらが所内の全停電につながったと説明したほか、同発電所職員の対応は概ね適切であったものの、そのほかの点では改善の余地があると強調している。

事故後 AEC は、自らのスタッフのほかに専門家のチームにも独自の調査を指示していた。今回公表された AEC の報告書によると、まず同発電所が立地する台湾南部の塩を含んだ海風が4系統すべての345キロボルト送電線の碍子に塩の結晶体を付着・堆積させ、これが所内への給電機能に不具合を生じさせる根本原因になった。また、送電線からの電力が途絶えた上に非常用電源が起動しないという緊急事態に際して、次の2点で不手際があったと同報告書は指摘。すなわち、台湾電力が「原子力発電所緊急時計画でレベル2Aと評定される緊急警戒事故が発生した」と AEC に報告したのは、同事象が18日の午前0時46分に発生してから90分以上経過した後。しかも、所内のすべての電源が15分以上喪失するという事態は、レベル3Aに分類されるにも拘わらず、実際に電源が失われていた時間は1時間34分に及んでいた。

この事故で1号機の原子炉そのものに影響がなかったとはいえ、安全関係の電力供給システムは2つとも使用できなくなっていたほか、2つの非常用ディーゼル発電機 (EDG) もすぐに起動しなかった。さらに、1号機の必須母線2本が出力を失い、2つの安全系が揃って2時間8分間機能停止に陥ったことなどから、同報告書では「台湾における22年間の原子力発電史上、最大の事件」との評価を下している。2時54分にはスウィング・ディーゼル発電機の接続により電力が復旧したが、この間、放射性物質の漏洩やその他の環境への影響はなかったと明言している。

このほか、同報告書が指摘した点は、(1) 電気火災による煙と停電により、EDG の1つを起動させようとした職員が開閉装置室に入ることができなかった (2) 所内の配電システムは防護上、設計上の調整を図るために改めて確証する必要があるとともに、最近の保守・点検時には問題のなかった EDG の操作手順についても同様の確証試験が必要−などとなっている。


Copyright (C) 2001 JAPAN ATOMIC INDUSTRIAL FORUM, INC. All rights Reserved.