[原子力産業新聞] 2001年5月10日 第2086号 <1面>

[総合エネ調] エネ政策、燃料転換軸に環境負荷を低減

原子力の増加なしには経済に大きく影響

総合資源エネルギー調査会・総合部会のエネルギー政策ワーキンググループ (WG) 第2回会合が8日開催され、2010年度をメドとする新たな総合エネルギー政策パッケージである目標ケースを検討した。環境目標の達成を前提とする複数のシナリオをまとめ、そのうち原子力を現行供給計画の10〜13基とした場合、基本的に最大限の省エネ努力、新エネ導入に加え、石炭から天然ガスへの燃料転換をはかって環境負荷を低減する必要性を示した。一方、原子力を今後、新増設しない場合は2008年度以降の経済成長を実質ゼロに抑制するなど厳しい措置が必要との見方が示され、今後原子力発電の新増設なしに環境目標を達成するには多大な経済社会への影響が避けられないことが浮き彫りとなった。


この日の会合で同 WG は、2010年度時点で90年度レベルの炭酸ガス排出量レベル (2億8,700万トンC) に抑制することを前提とする複数のシナリオを検討した。

そのうち、最大限省エネ努力をし、新エネ導入をはかったうえで原子力開発規模を今年度供給計画に示された10から13基を前提とするシナリオでは、省エネ努力などによって2010年度時点の発電電力量を9970億kW 時 (基準ケースでは 1兆292億kW 時) に抑える一方、石炭から天然ガスへの転換など燃料転換を軸に環境負荷低減をはかる方向性が示された。モデル評価などの結果では経済成長率2%程度と影響が比較的小さく、一定の炭酸ガス排出効果が見込まれるとしている。ただ燃料転換の際に、天然ガスの発電コストより石炭の発電コストが高くなるよう規制措置を講じる必要があるとしている。

また、原子力発電の新増設を今後行わないシナリオについては、燃料転換などの措置をとっても2008年度時点で1300万トンC を超える炭酸ガス排出量削減が必要となってくるため、同年度以降の生産、消費、雇用に大きな影響を与え、2008年度から2010年度までの成長率はゼロになるとの厳しい見方が提示された。

これらのシナリオについて各委員からは「省エネに関して国民の生活態度や意識の面をもう少し強調した方がいいのでは」と、国民への省エネ努力に明確なメッセージを送るべきとする意見や、COP6 の先行きが不透明な情勢下で「長期的な視野できちんと政策を議論する必要がある」など日本としてしっかりとした政策を打ち出す必要があるなどの意見が見られた。


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