[原子力産業新聞] 2001年5月10日 第2086号 <3面>

[OECD/IEA] 原子力の将来像で報告書

今後の問題点を指摘

経済協力開発機構/エネルギー機関 (OECD/IEA) は1日、OECD 加盟国における原子力発電の将来像を審査するとともに、原子力政策の策定に関連して加盟各国が直面する問題点を特定する報告書を公表した。

316頁にわたる「OECD 諸国の原子力発電」の中で、IEA はまず加盟国の原子カ開発利用の詳細な歴史と現状、今後の見通しについても解説。IEA のR.プリドル事務局長によると、この報告書は原子力発電に対する賛否のどちらかに肩入れすることなく、両論併記の上深く分析し、今後の議論が一層活発かつ事実に基づいた内容となるよう考慮したとしている。加盟各国政府が実際の行動を取っていく際の問題として IEA は、(1) 一般的な論点 (2) 原子力発電オプションの堅持を希望する加盟国の論点 (3) 原子力からの撤退を望む国の論点−を提示。(2) の国々にとって望ましいアプローチとしては次のようにまとめている。

原子力発電の評価 原子力を他の非化石燃料発電とともにエネルギー戦略全体の中で検討し、長期的に開発可能となるような判断を下す。

既存原子炉の運転に関する政策 既存原子炉の運転を続けていく上で不必要な障害物はすべて排除し、原子力施設の操業を支えている定期安全審査が迅速に実施されるよう支援する。また、安全規制上、逆行的な変更申請は過去の規制の中で明らかに不適切と判断された場合にのみ奨励する。

政策上の国民の信頼 すべての政策決定を公開するよう努力するとともに、残存している「秘密主義」を排除すること。政府による直接的な財政支援はいかなる種類のものでも公けの政府予算の中にはっきりと明示する。国民が議論する場を与えずに政権が全くの独断で原子力を開発支援する政策を決定してしまうことがないよう、十分民主的な手続きを徹底する。高レベル放射性廃棄物の処分に関する方針を決める場合は特に、一般大衆との意見交換が必要。政府が後援する国民との意志疎通プログラムは国民に原子力情報を伝える一助となるが、過度な強調は控えるべき。実施に際しては事実を伝達するだけでなく、原子力関連の決定に影響を受ける人々が原子炉の安全性や技術的な効率のほかに環境保全上の価値など社会的な価値をも含めて正しく認識できるよう範囲を広く取るべきである。また、原子力その他のエネルギー源が完璧に安全であるかのような示唆を与えるのは差し控え、原子力事故による潜在的な環境影響についても無視できる程度だからゼロであるなどと説明すべきではない。さらに、原子力施設の軍事利用と民生利用を厳密に分けることは難しいが、国民合意を促進するためにも民間の原子力発電所は軍用物質の生産のために使わないことだ。

国際協力 政府の研究開発予算が全体的に縮小しているため、公共の資金による原子力研究プログラムが国際的に適切に調整されるよう手段を講じるべき。国際共同研究開発が新たな概念の開発をどの程度加速するか検討する必要があるし、原型炉や実証炉の研究開発協力には関心が集まるかもしれない。また、コストを削減しつつ原子力インフラが活用できるよう、複数の加盟国間で研究施設や知見、経験を最大限に共有する方策を検討すべきだ。各国の安全基準を国際的に同調させるためにも改善策が必要だろう。


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