[原子力産業新聞] 2001年5月10日 第2086号 <3面>

[米国] シンクタンクが米国内での電力不足再発を警告

米国にある独立の立場のシンクタンクは先月中旬、同国での将来のエネルギー需給について審査し、「従来のように、包括的で長期的なエネルギー政策を持たないままでは1月にカリフォルニアで起こったのと同様の電力不足は今後いつでも起こり得る」と警告するとともに、エネルギーにおける経済的な相互依存に則した新たな対策を探らねばならないと訴えた。

この「21世紀の戦略的エネルギー政策目標」と題する報告書をまとめたのはライス大学のJ.べーカー3世公共政策研究所と外交問題審議会が後援する特別調査グループ。現在米国が直面しているエネルギー問題を解決するには、経済や環境、国家保障などの優先項目をバランスさせられるような方法が必要だと指摘しており、効果的な外交や自由貿易、革新的な多国間貿易と投資枠組みなどのすべてが21世紀の信頼できるエネルギー供給のために重要だと強調している。

原子力に関しては、現在、国内総電力需要の2割を賄うとともに、近年は予想外に良好な85%以上という平均設備利用率をマークしていることから、「カリフォルニアの電力危機によって、この重要なべースロード電源の重要性はますます強化された」と明言。温室効果ガスの排出という観点からも今後は一層魅力を増していくとの見方を示したほか、次のような点を行動計画として勧告している。すなわち、(1) 米国原子力規制委員会 (NRC) が許認可手続きの簡素化を通じて新規原子力発電所建設のための投資環境を改善し、電力の規制緩和と再構築に伴う不確定要素を解決する (2) 今後数年以内に、使用済み燃料の処分問題を解決するためにネバダ州や原子力発電会社、関係株主達と協力する (3) 今後5年間は原燃サイクルのフロント・エンドを維持するため議員達と協力する (4) 西欧諸国や日本などと協力し、これらの国々による支援の蓄積が可能な将来的な原燃サイクルを形作る (5) 教育制度を通じて原子力科学技術に関する教育を再活性化する−など。


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