[原子力産業新聞] 2001年5月10日 第2086号 <4面>

[原産年次大会] セッション2 「サイクル施設のある日英仏3地域から世界へ」

セッション2では、木村守男青森県知事、J.カニンガム英国カンブリア県選出国会議員、P.グレゴワール仏国ラ・マンシュ県知事の3名が、立地地域における核燃料サイクル施設の持つ意義と果たす役割を確認するとともに、文化的側面も重視した相互交流などへの期待をそれぞれ述べた。3地域間の将来の連携強化へ向けたメッセージを発する画期的なセッションとなった。


連携の強化を約束

カニンガム氏 過去30年間コープランド地域経済の発展には BNFL が大きな役割を果たしている。1万6,000人の雇用のほか間接的な効果が見られる。これから原子力産業は技術や安全性のみならず産業全体に及ぶ総合的な管理能力の向上と直面する課題について国民と率直に話し合う必要がある。1999年の BNFL の MOX 製造工場でのデータ改ざん事件が大きく日英の関係に影を落としたが、現在規制当局からの勧告を実施している。セラフィールドの従業員による「キャンペーングループ」が組織されていて勧告の実施状況の確認や BNFL の信頼回復に努めている。ブレア首相からも同キャンペーン活動の支援を表明してもらった。十分な知識を有する地域コミュニティがあることが原子力産業のひとつの財産と言える。

グレゴワール氏 現在ラ・マンシュ県には、ラ・アーグ再処理施設、フラマンビル原子力発電所、中低レベル放射性廃棄物処分施設があり、20年前から原子力産業が社会的・経済的発展の中心となっている。

地元への波及効果としては財政的なものがある。原子力施設は多額な税金を自治体に収めていて、ラ・アーグ再処理施設からの税収は同県の商業施設からの総税額の実に63%にのぼる。この財源により道路、業港や観光施設、学校などを建設できた。雇用の創出も10年間で40%増加、企業規模も拡大した。原子力が科学技術を発展させ、シェルブールでは高等教育が発達し、科学技術の拠点となりえた。今後も (1) 企業との連携のもとでの技術研究の推進 (2) 技術移転の促進 (3) 企業の進出や創設 (4) 産学協力の促進−が図られ、関連産業の発展につながるだろう。

木村氏 資源的、環境的な制約の中で、エネルギーの安定確保を図り、わが国が将来にわたり経済社会活動を維持、発展させていくためには、新エネルギーや水力資源などの非化石エネルギー技術開発への一層の努力を図りながら、国策として原子燃料サイクル事業を円滑に進めていく必要がある。本県も安全確保を第一義に地域振興に寄与することを前提として、事業に対して協力してきた。

度重なる原子力施設における事故などにより、県民の間には原子力の安全性に対する不安や原子力行政に対する不信が募り、それがいまだ払拭されていない状況。安全性の確認に関しては、県として厳正な対応をしてきた。話し合いから理解や信頼が生まれ、乗り切ってきた。今後もこうした姿勢は大事だと考える。

原子力に対する国民、県民の信頼を得るためには、政策の大きな変更や、一方的な計画の変更を認めるわけにはいかない。総合判断の立場から、知事就任以来、県と国が対等の立場にたって話し合う協議会の場を要請してきた。県民や国民に説明のつく原子力行政の必要性を感じている。

青森県がエネルギーや環境の視点から国に貢献していく、世界の途上国のエネルギーの食料問題に貢献していける立場を大切にしたい。環境にやさしく、安定供給が可能であり、経済性のあるエネルギーが開発された場合、その段階であらためて、代替エネルギーの利用について、国民のコンセンサスを得て進めるべきだ。

続いて、3地域の今後の関係強化について各者が意見を披露した。

カニンガム氏は、是非木村知事とグレゴワール知事に西カンブリア地方を訪問するよう要請するとともに、「共通認識に立ち、互いに学びあう原子力産業のホスト地としての声を結集すれば安全な原子力産業の一層の発展に役立つ」と指摘した。

これを受け、グレゴワール氏は「我々3か国は共通の選択肢を選んだ」と前置きし、原子力は地理的距離や文化的な違いを越え技術協力を土台として発展できると訴えた。そのうえで「互いの知識を組み合わせて世界のために貢献していけるものと信じる。環境に調和的な経済発展を今後続けなければならない」と述べ、原子力エネルギーはその核になることができると主張した。

また、木村氏は、「英国とフランスに共通するものは農業重視の中での工業化であった」として、日本は農業をもっと重視しなければならない点や、青森県が農林水産を軸とした福祉日本一を目指す中で原子力の貢献も促進させたい点を強調した。さらに是非英国も訪ねたいとして、「互いに学び、安全を第一義として協力を進めることが大事だ。異文化の実体験することが重要であるので、原子力行政と平行して文化・スポーツ面での交流も持ちたい」との希望を明らかにした。

3地域の代表はこのあと、固い握手を交わし、今後の交流の促進を誓い合った。


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