[原子力産業新聞] 2001年5月17日 第2087号 <1面>

[総合資源エネ調] 原子力安全・保安部会、5つの基盤を軸に安全確保

制度、知識など重点強化

原子力の安全確保をめぐって規制などの制度や、運転経験・研究成果などの知識、人材、施設、また付随する財政の5つの観点から安全基盤の強化が必要とする報告骨子が11日開かれた原子力安全・保安部会で取りまとめられた。

この日、示された骨子案では、JCO 臨界事故などによる国民の不信感の高まりに対応し、情報開示や説明責任の重要性が高まっていることや品質管理マネージメントの健全性を高める必要がある、原子力安行をとりまく経済などの環境変化、規制の高度化などにどう対応するかが求められている、との現状認識を示している。

このうえで (1) 安全規制など安全確保システム (制度的基盤) (2) 安全に関係する多様な研究の成果、形式知化された運転等の過去の経験の蓄積 (知識基盤) (3) 規制当局、事業者、研究現場に働く人材 (人材基盤) (4) 研究や運転訓練等の各種保安教育を行う施設 (5) これらの維持・向上に必要な資金 (財源基盤) −の5つを安全基盤の骨格に据えた。基本的な考え方として、ただちに安全上問題となる状況にはなく「原子力安全の基盤は確立、維持されている」としながらも「安全確保の努力に終着駅はない」との認識にたって今後の課題を示した。

そのうち、制度的基盤の面では、整合性ある規制体制を整備するとともに、確立論的安全評価に基づくリスク情報も踏まえた規制の必要性を示した。また関連情報の分かりやすい発信のあり方、サイクル分野での MOX 燃料加工事業等、進捗しつつある諸事業に対する規制対応などをあげた。

知識基盤の整備に関しては資金や人材の制約が強まるなかで、例えば軽水炉では事故時の燃料挙動研究、高経年化対応に重点化、また燃料サイクル分野にさらに重点的に資源配分するなどの方向性を示した。このほか、効率的な推進に向け、産学官の意見交換を通じた人材や知見等のロードマップ作成、ピアレビューなどを行うシステムを検討することも提案している。

人材基盤に関しては、産業界や行政機関などが連携して教育の場を充実・整備することや、技術の伝承にむけたマニュアル整備などの従来の枠を超えた連携が必要との認識を示した。また、産業界において人材の流動性を高めて効率的な人材活用を進めることや運転・維持管理等の訓練充実なども必要としている。

各委員からは、同骨子案について「アクションプログラムを明確に」など、具体的な政策の進め方を明確にすべきとの意見のほか、「国民の安全の認識と関係者の安全の認識にギャップがあることが大元にある問題で、これをどう埋めていくかが緊急に求められている」などの意見が聞かれた。同部会では、こうした意見を踏まえ、今月末にも次回会合を開催し、報告書案の検討を行う予定。

原子力発電の廃止措置や再処理、MOX 加工など燃料サイクル分野など広範な技術課題は同部会の下に設けられた各ワーキンググループがすでに検討を開始しており、規制等に係る具体的な技術課題の検討が並行して進められている。


Copyright (C) 2001 JAPAN ATOMIC INDUSTRIAL FORUM, INC. All rights Reserved.