[原子力産業新聞] 2001年5月31日 第2089号 <1面>

[プルサーマル] 刈羽村長、住民投票結果受けプルサーマル計画慎重に判断

村内に「原子力懇談会」設置へ

東京電力柏崎刈羽3号機でのプルサーマル計画実施に対する賛否を問う刈羽村の住民投票が27日に行われ、開票の結果、「反対」1,925票、「賛成」1,533票、「保留」131票で、反対票が得票率の53.4%を占めた。投票結果を受け、品田宏夫刈羽村長は、刈羽村民が示した "民意" を重く受け止めるとして、プルサーマル実施に対して「慎重に」対応を図る方針を確認。28日夕刻、品田村長は記者会見で、最終的な判断は県知事や柏崎市長との今後の協議に委ねる必要があるとしながらも、「投票結果を見れば、これまで村長として取ってきたプルサーマルに対する立場は取りにくい」として、計画実施の見送りを求める意向も示唆した。一方で「民意は生き物」との認識に立ち、今回明らかになった村の民意を動かすためには事業者や国の行動が課題だと強調。加えて今後、村民の間で原子力の問題について議論を交わす原子力懇談会を設けたいとの考えを明らかにした。


「プルサーマルという "国策" について昨日時点での刈羽村の民意が把握できた」と会見で口火を切った品田村長は、過半数を超えた反対票を目の前にして、プルサーマル計画の受入れには慎重にならざるを得ないとしながらも、「賛成するための積極的要因の乏しい中で1,533名の理解があった」と、賛成票を投じた住民の意思にも配慮を示した。一方、反対票についてもどういう点から反対を意思表示したか十分に分析する必要があると指摘。村民の意見を深く探っていくことが何よりも大事だと述べた。

その上で、「プルサーマル計画の受入れを完全に拒否することで、今後村にとってマイナス効果は本当にないか検証してみる必要がある」との認識を示した。単純に数字だけで判断すれば、村の方向性を定めることはできるとはいえ、「結果を最大限尊重しながら、村の今後を慎重に決めていくべき。そのためには時間が必要だ」と訴える村長は苦しい胸の内をのぞかせた。

一方、村長は事業者や国の原子力政策の理解を促す活動が大幅な見直しを迫られるのではないかと指摘し、「安全と安心を結び付けることがこれからの理解活動の課題だ」とした。

さらに、言わば村を二分したプルサーマル問題でこれまで賛成・反対双方が議論を交わす場がなかったことを挙げ、「原子力懇談会」を設けることを提案。村長としての使命は原子力安全の確保と村民の納得いく共生策の実現であるとして、話し合いを通じて村民と原子力のあり方を検討する場が必要との考えを強調した。

今定検中の MOX 燃料装荷が延期要請されるにしても刈羽村だけの判断で決定されるものでなく県知事や柏崎市長との協議を経なければならない。そうした中で、浮かび上がるのは99年3月に交わされた事前了解。今年初め、品田村長が住民投票条例案を再審議に付したのも、過去の事前了解を重んじていたからこそだ。了解の撤回には村長も難色を示していて、事前了解そのものには直接手を触れないで、当面見送りの方向性を示す可能性もある。三者会談は近く開かれる見通しだ。

さらに今後、村議会の動きも焦点となる。住民投票条例には、村長は村議会が投票結果を最大限尊重する旨がうたわれていることから、村議会がプルサーマルに対してさらに厳しい対応を迫る場合、品田村長は一層困難な環境の中で舵取りを図ることになる。


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