[原子力産業新聞] 2001年5月31日 第2089号 <4面>

[原産] 「放利研」が報告会

原研・高崎研 橋本氏、最新の知見を紹介

「近年、種々の化学物質による大気、水、土壌などの汚染や病原性微生物による水の汚染が地球規模的問題となっており、放射線を用いてこれら問題を解決するための研究と、その実用化の試みが数多く行われている」−29日に東京・港区の原産会議室で行われた「第16回放射線利用研究会報告会」の特別講演で、日本原子力研究所高崎研究所の橋本昭司材料開発部長は、環境保全に向けた放射線利用の新しい展開について、最新の知見を披露した。

硫黄酸化物や窒素酸化物による大気汚染を主因とする「酸性雨」や、ダイオキシンに代表される「内分泌攪乱物質」などに加え、最近では病原性微生物のクリプトスポリジウムによる上水の汚染などが社会問題化している。現在、放射線を環境保全に役立てようという様々な試みが行われており、橋本氏は、放射線を環境汚染物質や病原性微生物に照射して酸化・分解したり、不活性化する方法の最新情報の実例として、燃焼排煙の脱硫・脱硝、空気ベースガスに含まれる揮発性有機物の分解、ゴミ燃料排煙中ダイオキシンの分解、排水処理、生物汚染対策、エネルギー利用効率−について紹介するとともに、今後の課題を示した。

同氏はまた、地球環境問題としては世界的に最も注目を集めている「地球温暖化問題」に触れ、「温暖化で問題となっている CO2 の放射線による処理技術については現在のところ、良いアイディアはないが、極めて重要であり、今後の努力が必要」として、同問題に対しても、放射線照射利用の道を探っていく方針であることを明らかにした。


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