[原子力産業新聞] 2001年6月7日 第2090号 <1面>

[サイクル機構] もんじゅ改造工事、国に安全審査を申請

福井県の栗田幸雄知事と河瀬一治敦賀市長は4日午後、高速増殖原型炉「もんじゅ」の改造工事に伴う安全審査のため核燃料サイクル開発機構が昨年12月に提出していた事前了解願いについて協議を行い、了承することで一致、5日にサイクル機構に対して文書で回答した。これを受けて、サイクル機構は翌6日、国に対して原子炉設置変更の許可を申請。1995年12月のナトリウム漏洩発生以来、5年6か月を経て、運転再開に向けて所要の手続きが開始された。

ナトリウム洩漏対策など実施

4日に行われた話し合いの中で、栗田知事は事前了解の承認が運転再開に直ちにつながるものではないとしながらも、安全審査入りを判断する時期であるとの認識を示し、河瀬市長も同様の考えを明らかにした。

「もんじゅ」の安全審査入りをめぐっては、先月19日に遠山敦子文部科学大臣が福井県を訪問した際、県側に対して早期の事前了解承諾を協力要請するとともに、先に県議会会派の県会自民党から出されていた地域振興策などを盛り込んだ要望事項にも配慮を見せる姿勢を示していた。

5日午後栗田知事は、県庁を訪れた都甲泰正サイクル機構理事長に事前了解を正式に了承する文書を手渡し、ナトリウム漏洩対策だけでなく「もんじゅ」全体の安全性強化をサイクル機構に要望するとともに、県としても独自に安全性を確認していく意向を示唆した。また、敦賀市役所では河瀬市長からも竹内榮次副理事長・敦賀本部長に同様の文書で了解を伝えた。

6日午前には、都甲理事長が経済産業省原子力安全・保安院に赴き、ナトリウム漏洩対策となる改造工事実施のための原子炉設置変更許可申請書を佐々木宜彦保安院長に届け出た。同院長はこれに対し、安全対策を厳正に審査していくとの姿勢を示し、安全対策上重要となる点については今後通達を出し、確認を求める意向を伝えた。

今回申請を行ったナトリウム漏洩対策工事は漏洩発生時の火災影響を緩和する機能を高めるのが目的。 (1) ナトリウムが漏洩した際、早期に漏洩を終息させるための補助設備の改造 (2) 煙感知ならびに熱感知型のナトリウム漏洩検出器の設置 (3) ナトリウム燃焼を抑えるための窒素ガス供給設備の改造−などが盛り込まれている。工事期間は約17か月で、必要な費用も約167億円と見積もられている。

国の安全審査には1年程度かかる見通しで、合格した後でも、実際の改造工事着手には地元の理解が前提となる。運転再開にはまだ数年が必要となるが、最大の課題となる安全面での強化へ、歩を進めたことは確かだ。


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